エルフ、受け取る
『それで結局テナール様がいらっしゃったのはなぜです? 契約者であるイルゼにもなんらかのペナルティがあると?』
「え⁉︎」
ソラウがやらかした事なのに私にも何かあるの⁉︎
いや、でも契約してるわけだし、ペットがやらかしたら責任を取らないといけないといった感じなんだろうか?
『にゃははは、そんな事はないっス。やらかしたのはあくまでもパイセンなわけっスからね。今回来たのは単純にパイセンが戻ってこない事を心配しないようにという配慮のためとパイセンの契約者がどんなのかってのをこの目で見たかっただけっス』
用事は済んだと言わんばかりにソファーから立ち上がりながらテナールは笑いながら背を向けて扉の方へと歩き出そうとして、何かを思い出したように振り返った。
『パイセンは多分一ヶ月は精霊界で拘束っスかね。あ、別に拘束って言っても縛り付けてるとかそんなん非精霊的な事じゃないっスよ。一時的に魔力を封じて精霊界で過ごしてもらうだけっス』
緩いね。
普通なら縛ったりすると思うんだけど、本当に精霊界から出れなくしているだけみたいだし。
一ヶ月の間魔力を封じられるという事とこちらに来れないだけなんて。
と、そんな事を考えてイーリンスを見たらイーリンスは顔を青くしていた。
え、なに? どこにそんな怖い要素があったの?
「イーリンス、気分が悪いの?」
『いえ…… 結構キツイペナルティだなぁと思ってね』
ん? 魔力を封じられてこっちに来れないだけでどうしてキツイペナルティになるんだろう?
『イルゼは知らないと思うけど精霊界は精霊達が住む場所よ』
「知ってるよ?」
さすがにそれくらいは私でもわかる。
むしろそこに魔獣とかいると言われたらそれはそれで驚きなんだけど。
『そして精霊界は高低差が凄い場所でもあるわ。なにせ住んでるのは空を普通に飛べる精霊達ばかりなんだから』
「へー」
山とか森とかいっぱいあるイメージだったけど。
『そんな高低差がある場所で自然に魔力を使って飛んでる精霊から魔力を奪われたら……』
「あ……」
イーリンスがそこまで言って私も気づいた。
魔力を封じられるという事は精霊として意識せずに行っていた空を浮くということも封じられることになる。
しかもイーリンス達の話では凄い高低差がある場所で。
『にゃはは、ちなみにパイセンが放り出されたのは精霊界の一番下の場所っス』
『「うわ……」』
つまり、移動するだけで大変って事でしょ?
無理、私なら死ぬ。
『ソラウ様でも倒れますね。それは……』
『大精霊法案を破ったパイセンが悪いっスよ』
にゃハハハハハとテナールは楽しげに、本当に楽しげに笑ってる。
『あ、あとこれパイセンからの預かり物っス』
イーリンスと私が嫌そうな顔を浮かべていると、テナールは出会ってから一番いい笑顔を見せながら、どこからか取り出した物を私へと放り投げてきたので慌てて受け取る。
一瞬だけ投げられた物を掴み、受け取るために逸らした視線をテナールの方へと戻すとテナールは霞むように姿を消したのだった。




