エルフ、つよめる
『それでその危険な契約を行った張本人であるソラウパイセンっスけどね、今精霊界で拘束されてるっス』
「拘束?」
ウケるよねと笑うテナールだけど私は首を傾げて隣のイーリンスを見た。
しかし、疑問を浮かべているのは私だけのようでイーリンスの目はハイライトを失いながらも遠くを見ているような眼だった。
『ソラウ様は何をしたんです?』
あ、もうソラウが何かした前提で話を進めるんだね。
いや、確かに私もソラウが何かしたとは思うんだけどね。
『ああ、大精霊法案に引っかかる事をしだっス』
また知らない単語だよ。
なんなのよ大精霊法案って。
『簡単に言えば大精霊がやっちゃいけない事っスね』
「しちゃいけない事?」
『そうっス。大精霊ともなるとちょっとしたことでも世界を壊しかねないっスからね。ある程度のルールが存在するんすよ』
それが大精霊法案っス、とテナールは言う。
つまりソラウはしちゃいけない事をしようとしたわけだね。
『具体的には何を?』
『簡単な事っス。おちょくられてキレて大精霊としての全力を出そうとしたんっス』
大精霊としての全力?
でもソラウは今までも全力で暴れてる事はあった気がするんだけど……
『イルゼちゃんは顔に出やすいっスね!』
え、そんなにわかりやすかった?
『いや、さっきもっスけど口に出してるっス』
「え、ホント?」
『マジっス』
今度から口を押さえておこう。
『で、ソラウ様の全力についてっスけどイーちゃんは解ってるっスよね?』
『一応は高位精霊になった時の講義で聞いてるわ』
「講義なんてあるんだ……」
精霊さん達が行儀良く座って話をしている姿なんて全く想像できないんだけど……
『大体イルゼが想像している通りですが高位精霊になったとはいえ精霊には変わりません。だから話を聞かないというか遊んでる精霊がいるのも多いのよ』
『ま、説明するのは大精霊のうちの誰かなんで無理やり聞かせてるっス』
強制的に聞かせてるわけね。
『で、話を戻すっスけど、大精霊の本気というのは詠唱が入った場合を指すっス』
「詠唱?」
詠唱ってアレだよね?
魔法の威力を強化させるやつ。
私も使わないけど、言われてみればソラウやイーリンスも使ってないし、なんだったら精霊さん達も使ってるの見たことない気がする。
『知ってると思うっスけど、魔法を使う前に詠唱を入れることによって威力が上がるっス。だけど大精霊が詠唱を行うと威力が上がるとかそんなレベルじゃなくなるっス』
「ふーん」
なんか違う効果が出るということ?
でも見た事がないからよくわからないんですがね。
『ま、簡単に言えば世界を壊すくらいの魔法へと変わるっス』
「ふーん、え……」
世界を壊しちゃうくらいの威力の魔法ってあったんだ……
『そんな規模の魔法を使おうとしたわけだからパイセンは拘束されてる訳っスよ』
にゃははは、とテナールは愉快そうに笑う。
そんなテナールの笑う姿が楽しそうに笑っていたソラウの姿と被る。大精霊って、やっぱり力を持っただけの子供ってイメージが私には強まったのだった。




