エルフ、蹴る
『やあやあ、お邪魔するっスよ』
体の真ん中から色の違う服を着た奇妙な人物がもたれていたかべから離れると半分だけ見える顔を笑わせながらイーリンスの部屋へと足を踏み入れてきた。
「だれ?」
『て、テナール様⁉︎』
『さま⁉︎』
『さまー!』
私が見覚えのない人物に対して首を傾げるのとイーリンスが顔色を変えて膝を突き、頭を下げていた。
精霊さん達はというと「さまーさまー」と敬ってるのか馬鹿にしてるのかよくわらかないトーンで連呼してるし。
『イーちゃん、相変わらずっスね。親しみを込めてテナールと呼んで欲しいっていつも言ってるっスのに』
『ご冗談を。大精霊様をそんな呼び捨てになんてできませんわ』
ニコニコとテナールとかいう大精霊は笑ってるけど、イーリンスとは知り合いらしい。
と言っても私、大精霊ってソラウしか知らないしね。ソラウが大精霊ってことも最近知ったくらいだし。
『仕方ないっスね。まあ、呼び方はいいっス。それより話がしづらいから頭は上げて立ってほしいっス』
『はい、わかりました』
テナールの言葉に頷いたイーリンスが頭を上げ、立ち上がると指を鳴らした。すると部屋に飾られていた植物が蠢き、あら不思議。あっという間に豪華なソファーに早変わりしていた。
『さすが大精霊候補のイーちゃんっスね。あ、イルゼちゃんも座るっス。あ、自分は拘束の大精霊テナールと言うっス』
手招きされ、ソファーの空いてるところを叩いていたので私はテナールの隣へと腰を下そうと近づいていくと、
『まったぁ!』
『いるぜにはこっち!』
『しんさくだよ!』
それを妨害するかのように精霊さん達がなんか巨大な椅子を持って前を遮った。
『これしんさく!』
『かったまじゅうのいいほねだけをつかいました』
『ぷれみあものー』
「えぇぇ……」
物凄い重そうな音を立てて、椅子が床へと置かれて……って骨の椅子⁉︎
今までなんか木とかで丁寧な細工を施して作ってたじゃん⁉︎
なんでいきなり素材を活かす系の椅子作りになってるの⁉︎
骨の良さなんて私にはわからないんですけど……
すごく座りたくない。絶対座り心地悪そうだし。
あとなんか肘を置くとこの骨! あれ絶対人骨だよね⁉︎
アンとかトロワとかさっき会ったけど、掃除の小言とか言われすぎてイラッとしたからとか言って殺してないよね⁉︎
そして精霊さん達! そんなキラキラした目で私が座るのを期待しない!
こんなの私、絶対座らないんだから!
座る気など全くない私は怒りのままに魔力を足へと込めると全力で骨の椅子を蹴り上げた。
「そりゃぁぁぁぁ!」
『『『ぁぁぁぁぁ⁉︎』』』
私の渾身の一撃を受けた骨の椅子は凄まじい速さで宙を飛び、精霊さん達が悲痛な声を上げる。
骨の椅子は壁へとぶつかると爆音と共に壁に巨大な穴を開けて外へと飛び出すと、盛大な音を立てて地面に激突してバラバラになったのでした。
そんな精霊さん達の悲痛な叫びの横でテナールはというと腹を抱えて笑っていました。




