エルフ 、起きる
「うん?」
喪失感みたいたものを覚えた私は何日かぶりに目を覚ました。
何かが薄くなったような気配を感じたような……
なんかあったものがいきなり消えたみたいな感覚。
あと、なんか胸が重い、すっごく重……
「フィズ、どいてくれない?」
「きゅ?」
なんか私の上でフィズが身体を丸めて寝てた。しかも私の声に明らかに反応したのに一度目を開けて此方をチラッと見ただけでまた寝たし!
とりあえず、私は身体を起こすと寝ているフィズの首元を掴んで放り投げる。
可愛らしい悲鳴をあげながらフィズは宙でクルっと軽やかに回転してベッドに着地。
欠伸をしてまた身体を丸めると寝始めていた。
「いや、ここ私の部屋なんですけど……」
まるで自分の部屋であるかのようにベッドを堂々と占拠してますし。
まあ、もう眠気がなくなったからいいですけど。
寝たままで私にまるで関心がなさそうなフィズをほったらかしに床に脱ぎ散らかした服を着込んで部屋の外へと出る。
『あ、いるぜだ』
『おはー』
「おはよう」
廊下にいた精霊さん達が部屋から出てきた私に気づいたのか軽く挨拶をしてきます。
君達、朝から元気だね。なんか魔法を撃ち合ってるけど遊んでるんだよね? 殺し合いじゃないよね?
なんか迎撃し損ねた魔法が壁に当たったり飾ってある壺とか壊してるけど大丈夫だよね⁉︎
『あ、やべ!』
『つぼこわれたよ⁉︎』
『ろうかこげてる!』
なんか慌ててるしさ。
ついでに言うとなんか廊下の奥から強い魔力を感じる。嫌な予感しかしないからとりあえず廊下の隅へと寄っておく。
あたふたしている精霊さん達だけどそんな彼らに向かって廊下の奥から凄まじい勢いで蔦が飛んできては、宙に浮かぶ精霊さん達を片っ端から捕獲しては廊下の奥へと連れ去っていった。
『みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
『わ、わたしわるくないもん!』
『き、きんきゅうりだつ!』
『え、えまーじぇーしーです!』
悲鳴を上げながら逃げ惑う精霊さん達ですが、ここは外ではなく、室内。しかも奥行きしかない廊下です。
逃げる場所が限られている精霊さん達は瞬く間に一人、また一人と確実に数を減らしていき、
『い、いずれだいに、だいさんのぼくたちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
最後の精霊さんが蔦に捕まり、負け惜しみ? みたいな叫びと共に廊下の奥に姿を消した。
「また派手にやりましたね」
「でもまだマシじゃない?」
しばらく廊下に落ちていた静寂だったけどまるで、滲み出るように姿を現した二人の声で破られます。
「おはようございますイルゼ様」
「おはよーイルゼ様」
「おはよう」
姿を現したのは帝国からやってきたエルフの二人、アンとトロワ。
姿を現した二人の手にはモップやバケツといった掃除用具があった。
最近はイーリンスの書類仕事を手伝ったり、精霊さんが暴れた後の片付けをしたりしてるらしい。
といっても最近はイーリンスの書類仕事もほとんどないらしく、大体が精霊さん達の後始末らしいけど。
「寝起きのようですが食事になさいますか?」
私の姿を上から下まで視線を向けただけでアンは寝起きと断定してきた。
なんでわかるんだろう?
「んー、めんどうだからいいや。それよりイーリンスは? 部屋にいる?」
「イーリンス様ならばおそらく部屋にいらっしゃるかと」
「なら聞きたいことがあるから部屋に行くね」
掃除を開始したアンとトロワにひらひらと手を振り、別れた私はイーリンスの部屋へと向かうのだった。




