大精霊、感心する
『エルフはやはりどこか抜けとる気がするのぅ』
『がくぶる』
『あれがこっちにむかないことをねがいたい』
『いるぜとはまたちがう?』
我の呟きに賛同するかのように周りの精霊達が口々に感想を述べておる。
いや、言いたくもなるのぅ。
イルゼの奴の場合は自分の力がどれくらいあるかを理解してないがゆえの暴走があるわけなんじゃが、このダークエルフ、シャオと言ったかのう。こやつは自覚していてこの威力を叩き出しとる。感心するくらいに自分の力を理解してこの威力を出しとるわけじゃ。
腕を振り切った姿勢で固まるシャオの前にあるのは先程まであった戦乱による騒めきなどは皆無。
目の前に広がるのは荒野と化した元草原じゃ。さらにその先にあった城壁には巨大な穴が作られとる。
『うっわー』
『あれどうやるのー?』
すでにシャオに懐いているらしい精霊の何体かが興味を持ったようでシャオの周りを飛び回り長らく尋ねておる。
それに気付いたシャオは振り切ったままの姿勢を元に戻しながら飛び回る精霊達へと目を向ける。
「簡単」
『おしえておしえて!』
「魔力込めて振る」
『……』
「ん? 聞こえなかった? 魔力込めて振る」
『……』
ワクワクとした様子から一転して精霊達は呆れたような困ったような眼をしておる。
いや、まぁ、当たり前じゃよな。
あれは説明ですらないわけじゃし。
『そらうさま!』
『しゃおがいじわるだ!』
『おしえてくれない!』
「え、ちゃんと教えたのに」
なんかシャオの奴がショックを受けたような表情を浮かべとる。
あー、きっとシャオの奴は感覚的に使っとるんじゃろうなぁ。
イルゼの奴もそうじゃし。
あやつも説明させると手振り身振りでさらには擬音まみれの説明じゃからな。何言っとるかわからんし。
感覚で使っとる奴は説明ができんみたいじゃ。
『圧縮した魔力を放っとるんじゃよ。これくらいわからんと精霊としての位が上がらんぞ』
なんか精霊達が凄く落ち込んどるんじゃが、まあ知らん。
『あっしゅく……』
『こんごれんしゅうしなくちゃ』
『あれがつかえれば……やれる!』
何をやる気かは知らんがあんまり聞きたくないのう。
殺る気じゃない事を願う。
『じゃが甘いのう』
『え?』
我が上を見上げ呟いておると少しばかり遅れて精霊達も気付いたようじゃ。
頭上にある影に。
影は徐々に落下する速度を上げながらこちらへと迫り、
「ぐらぁぁぉぁぁ!」
怒鳴り声を上げながら巨大な剣を振り下ろしてきた。
『ひ、』
『ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!』
刃を振り下ろされたことに気づいた精霊達が甲高い悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすようにして逃げ惑う。
「ん」
そんな中でもシャオだけは焦った様子など微塵も見せず、無表情のまま、未だ黒く染まったままの腕を振り下ろされた凶刃へと伸ばし、無造作に掴み取った。
黒碗と凶刃、二つの魔力の籠もった武器がぶつかり合ったことにより、周囲へ魔力と衝撃波が暴風を纏いながら吹き荒れる。
『わぁぁぁぁ!』
『めがまわるうぅぅぅぅ!』
『これがぜっきょうましーん?』
いきなり生じた暴風に精霊達はなす術もなく巻き込まれて天高く飛んでいきおる。
じゃが上がっとる悲鳴は心なしか楽しそうじゃのう。
しかし、シャオと対峙する体が半分凍っておる獅子族の男は違うようじゃ。
見るからに顔色が悪いし、額には玉のような汗が浮かんでは我の魔法のせいで瞬時に凍りついておる。
「ま、魔王さま⁉︎」
「ターナトス、ちょっとは強くなった?」
驚愕する獣人など全く関心がないようにシャオは無表情に呟いていた。
やはりこやつは別格なんじゃろうなぁ。




