幹部、悲鳴を上げる
「ああ、脳筋から解放されるって素晴らしいわ」
私、マカーレフは部下と共に災害の森と呼ばれる場所からかなり離れた位置にて小休止をとっている。
素晴らしいわ! 本当に無駄なストレスだったのね。あの脳筋は。
「隊長は本当にターナトス様がお嫌いですね」
「あら、当たり前じゃない。物事が全て筋肉で解決できると信じてる奴なんて好きになる方が無理よ」
あいつは事務仕事すら筋肉でどうにかなると考えている節があるしね。
なにより筋肉と戦闘について意外は会話が成立しているかどうかも怪しいわ。
「しかし、よかったんですか?」
「何がかしら?」
「ターナトス様を置いてきてですよ。魔王様に叱られません?」
不安そうな顔で周りにいる部下達が私の顔を見てくる。
そんな部下の不安を拭うように私は笑顔を浮かべる。
「安心なさいな。魔王様からもダメそうなら無理せず撤退するようにと命を受けているわ。そもそもあの方は無駄に命が散るのを好まない方というか無関心だから」
そう、魔王様は素敵な方なんだから!
あんな脳筋野郎とは比べ物にならないくらいに。
もしもどちらかしか助けられないという状況があるのなら私は喜んでターナトスを地獄に叩き落とすだろう。
「しかし、いくら豪王ターナトス様でもあの森の深部に辿り着くのは難しいのではないでしょうか?」
「それはそうでしょうね。ま、あいつなら死なないでしょ」
深部に辿り着けない。それは間違いない。サロメディスですら無理だったんだから。
でもあのバカは脳みそが筋肉でできてる代わりに本能的な直感が凄い。危険を感じるとすぐに撤退するだろう。
伊達に獅子の顔なわけじゃないのだ。
「とりあえず、私たちの仕事は終わりよ。さっさと撤収するにかぎるわ」
死にかけだったサロメディスが絶対に手を出さない方がいいとまで言ってた森なのよ? そんな所の近くにいたいわけがないわよ。
「それもなるべく早くね」
「隊長、それは何故ですか?」
何故って?
そりゃ、ターナトスらしき魔力反応が凄い勢いであの森から退却してるからよ。
あの突撃しか命令しないであろう筋肉バカが退却を選ぶ。
この時点でヤバイ予感しかしないじゃない?
「って、まじでヤバイ!」
「た、隊長?」
明らかにターナトスの魔力反応の移動速度が上がった!
それも災害の森の範囲外に出たのにも関わらずに!
あそこの魔獣は災害の森を囲むように貼られている結界のせいで抜け出せないはずよ! だったら普通、ターナトスは結果外に出たら逃げる速度が遅くなるはずなのになんで加速してるの⁉︎
「まったりと休憩してる場合じゃなくなったわ。総員、急いで移動するわよ!」
「「「り、了解!」」」
忙しなく移動を開始する部下を見ながら私も移動を再開しようとしたその時、
「ま、マカーレフ! 助けてくれ!」
「「マカーレフ様!」」
想定以上すぎる速度でターナトスとその部下が森の奥から姿を現した。
その姿は少し前に見た姿ではなくボロボロでターナトスに至っては右手が無くなってた。
『あ、あっちにもなんかいる』
『とりあえずほかく?』
『あしつぶしたほうがいいかな?』
『あれやろう、あたまばーん』
『つりあげちゃう?』
そしてその背後からはなんだか純粋な声で酷いことを言う存在が姿を現した。
「ひぃぃぁぁぁぁぁ⁉︎」
そんな存在を目にした私は無意識に悲鳴を上げたのだった。




