筋肉、滾る
「フハハハハ! 突撃突撃突撃!」
「ヒャッハー!」
「突撃だゼェ!」
俺達ターナトス軍は前進する。
次々に魔獣が飛びかかってくるが俺の、そして魔法の弓矢を乱射する俺の軍の敵ではない!
「ふん!」
軽い声と共に背中に背負っていた巨大な剣、大竜刀を抜き放ち振り下ろす。
俺に向かって口を開きながら飛んできた巨大なトカゲらしき魔獣が大竜刀に顔面からぶつかり両断。周りに血を撒き散らしながら絶命する。
「さすが大将!」
「さすが筋肉!」
「さすが脳筋!」
「ふっふっふ、褒めるでないわ」
大竜刀に付いた血を振るって払い背中の鞘へと戻す。
ドワーフが十人がかりで竜を殺すために作り上げた巨大な剣、それが大竜刀だ。
ただ、竜を殺すための硬さ、更にはその巨大さ、そしてあまりの重さに扱える者がいなかったらしい。だが、多数いる魔族の中でも力だけならば一、二を争う我が獅子族の中で俺だけが自在に操ることができる。
「この大竜刀が敵を切り裂く限り我等に負けはない! 突き進めぇ!」
「「「ヒャッハー!」」」
俺の軍は魔力に特化したサロメディスとは違う。
力こそパワー! 力こそが全て! それこそが絶対だ。
現に部下達は飛びかかってくる魔獣に苦戦しつつも撃退しているからな!
最後に信じられるのは無くなる魔力ではなく鍛えぬいた己の筋肉だからな。
「大将! 十人隊長が死にました!」
「なにぃ⁉︎ 筋肉が足りんかったようだな! お前が今から十人隊長だ!」
「合点です!」
まあ、筋肉の鍛錬不足で部下が倒れるというのはいつもの事。だが筋肉が抜ければ新たな筋肉で埋めればいい。
「ターナトス様」
俺の首に噛みつこうと木から飛び降りてきた巨大な蛇を掴みその首を握り潰しながら声の主へと顔を向ける。
そこにいたのは筋肉があまりにもなくヒョロイ獣型の魔族だ。
それでも頭の中に筋肉があるのか俺の軍では一番頭がいい筋肉だ。
名前は確か、えーと……
「なんだ、アロハ」
「アルマです。いい加減に名前を覚えてください」
そうだったそうだった。
どうも筋肉が少ない奴の名前を覚えるのは苦手でなぁ。
「凄まじい魔力の塊がこちらに向かいつつあります。それも周りの魔獣を蹴散らしながら」
「ほう!」
俺は魔力の感知とかは全く得意ではない。むしろわからない!
だが進んでいく、つまり中心に近づくにつれて魔獣が強くなってるのは分かる。筋肉が滾るからな!
そして今向かってきているのは恐らく中心から向かってきている。つまりは強者!
「ふっふっふ! 掛かってくるがいい!」
すでに俺の視界にも樹々をへし折りながらこちらに向かってくる何かがいるという事はわかっている。
俺が再び背中の鞘から大竜刀を引き抜いた次の瞬間。
森の奥から現れた何かが振り下ろしてきた物と俺が振るった大竜刀がぶつかり爆音が響いた。




