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来客編、裏側 エルフ、離れる


「じゃ、トロワ行きますよ」

「さすがだよアン。容赦なく嘘を付いたね」


 トロワ、なんですかその人を悪人みたいに表現するのは?

 私は全く嘘などついていないというのに。

 先ほどまで精霊達が遊んでいた廊下にはすでに精霊の姿が一人も見当たりません。

 それも当然。

 今、精霊達は私達と遊んでいる真っ最中なんですから。


「私は一切嘘を言ってませんが?」

「いやそうだけどさ」


 トロワが何故か苦笑を浮かべています。


 私が精霊達に提案した遊びは隠れんぼ。

 私達が十分後に探し始めるので城の中限定で隠れるように言っただけです。

 制限時間は朝日が昇るまで。


「これずるいよね〜」


 ずるい? どこがずるいというのでしょう?


「探す気ないでしょ?」

「失礼なことを言いますね」


 私は真面目に探している最中・・、まずは手近な部屋から探すのは当たり前の事です。

 それに今は深夜、もしかしたらベッドに隠れているかもしれませんし、部屋に隠れにくるかもしれないのですからベッドで待ち構えるのに何が問題あるというのでしょうか?


 それになんとなくですがあの精霊達なら怒ってもお菓子を渡したら許してくれそうですけど。


「それより早く陛下に話をしに行きますよ」

「そうだね」


 音と気配を消す魔法を同時に発動させて私とトロワは扉を開けて滑り込むように部屋へと入り込みます。


「あ」


 中に入った瞬間にトロワが小さな声をあげます。

 いや、私も上げたかったですよ。


「うん? 連れてきたエルフの二人だね」


 だって中に入ったら寝てると思ってた三人、陛下に聖女様にレオン様がテーブルに座ってグラスを傾けていたんですから。

 いや、レオン様だけはグラスを持っていない手が腰の聖剣の柄へと伸びていましたが。

 この時点で陛下にナイフを押しつけて脅すというのが不可能になりました。

 意味がなくなったので音と気配を消す魔法を解除しておきます。


「これ、あの精霊達が趣味で作ったグラスとお酒らしいよ。酷い話だよ。趣味で作ったはずなのに帝国の技術より上だし、さらにはお酒まで美味しいときてる」

「うぅ、神国のお酒が水に感じるくらいに美味しいんですよぉ」


 私が陛下達の手にした物が気になっているのに気付いたのか陛下はグラスを見えるような高さまで上げます。

 よく見ると陛下と聖女様は笑ってるような泣いてるようなよくわからない表情を浮かべてます。

 まあ、人よりも上位の精霊達ですからね。趣味で作っても人以上の物を作り出すでしょうし。


「陛下にお願いがあって参りました」


 君たちも飲む? とグラスを掲げてきた陛下に首を振り、私は即座に片膝を付き頭を下げます。トロワも同じように横で頭を下げています。


「……あんまり聞きたくないんだけど何?」


 そんなあからさまに嫌そうな顔をしなくてもいいと思うんですが。


「はい、私達二人は帝国を離れてこちらのイルゼ様に仕えたいと思っております」

「ふーん」


 手にしたグラスを回すようにして遊ばせながら陛下は気のない声を上げています。


「もし、訴えを受理されないのであれば陛下の腕と足くらいは折ろうかと考えております」

「いきなり物騒になったね⁉︎」

「ではトロワ、折ってください」

「返答も聞かずに実力行使はやめよう!」


 トロワが音もなく立ち上がるとレオン様も立ち上がってきます。

 トロワは楽しそうにニコニコと笑顔で、レオン様はどこか緊張した様子という真逆の反応。聖女様はというとオロオロとしているだけです。


「はぁ、別に構わないよ」

「いいのかよ、ヴィ?」


 深々とため息を吐きながら陛下はソファに深くもたれ掛かるようにして告げます。

 その返答が意外だったのかレオン様が眉を潜めながら確認してます。


「まあ、エルフの二人が抜けるのは痛いよ? いざって時の交渉ひとじちとかに使えなくなるし、なによりこの二人は文官としてはとても優秀だし」


 あら、意外と高評価を受けていたようです。

 あと、交渉が人質と聞こえた気がしましたが気のせいですよね?


「それでも今はエンシェントエルフの、イルゼの機嫌は損ねたくない。彼女自身はぼんやりしてる感じだけど彼女が不機嫌になれば周りの大精霊や精霊、エンシェントドラゴンがどう動くかわからない。下手をすればこの災害の森にいる魔獣が暴れ出すより不味いことになる」


 もう出てくる固有名だけでもすでに不味いですからね。

 エンシェントエルフにエンシェントドラゴン、さらには大精霊に魔獣。

 どれか一つでも暴れたら国が消えそうです。

 本当に危険地帯です。


「だからそういう意味でも君達がここに残るという選択は止めないよ?」


 ニッコリと笑う陛下の顔を見て舌打ちしたい衝動を抑えます。

 つまりは私たちをイルゼ様を監視する為の眼にするということかしら?


「ふふ、陛下の望み通りに行くとは思いませんが?」

「まあ、できたらいいなくらいの感覚だよ。逆鱗には触れたくない」


 あ、こっちが本音ですね。

 監視というよりも何に対して怒るのかを知りたいと言ったところでしょう。


「では帝国を離れるのを了承したと受け取っても?」

「いいよ。たまに情報を流してくれれば」

「ご冗談を」


 ハハハハハと私と陛下は声に出して笑います。

 なぜか他の三人はそんな私達の様子を引きつったような表情で見ていましたが。

 こうして脅迫する事もなく陛下からの許可を得た私とトロワは翌日、精霊と決闘をし勝利を収めたイルゼ様に仕えることができるようになったのでした。


 ついでに隠れんぼをすっぽかした事を精霊さん達に怒られましたが木の蜜から作ったアメを差し上げるとすぐにご機嫌になってました。

 なぜかイルゼ様もニコニコと笑いながら食べていましたが。

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