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来客編、裏側 エルフ、叩き込む

 

 目が覚めるとそこは見た事がない場所でした。軽く周りを見る限りどこかの城の広間のような巨大な空間のようです。

 しかし、不安のようなものは一切感じません。

 それどころか何か見守られているような心地よい感じがします。

 もう一度周りを見渡すと私と同じように倒れ込んでいるような方々、騎士やら神官の方々の姿も見られます。


「助かったのでしょうか」


 災害の森で起きたことはまさしく悪夢のようものでした。

 あんなのが日常的に行われているのが普通ならばやっぱりこの森はおかしいと思います。


「うぅ、もう食べられないぃ」


 横を見るとトロワが私と同じように転がされています。

 どこかわからない所で眠れるというのは凄いというべきか図太いというべきか悩ましい所です。

 しかし、この懐かしいというか落ち着くような気配は一体なんなんでしょう?


『ちりょうのじかんだー』

『はいふはいふ』

『ぶっかけるぞー』


 考え込んでいると広間の扉が大きな音を立てて開き、そこから箱を手にした精霊達が次々に飛び込んできました。


 くるくると回りながら飛ぶ精霊達にみんなが呆然としている中、精霊達は特に気にした様子もなく怪我人の元へと飛んでいき、箱から取り出したらしい物、おそらくは瓶に入ったであろう液体を怪我人の口に突っ込んで無理矢理飲ませていた。


「ガボ⁉︎ グバガギ⁉︎」

『だしちゃだめー』

『あばれちゃだめー』

『のんだらぜんかい』

『かたこりやひえしょうにもきくとうわさ』


 いや、突然飛び込んできて得体の知れないものを口に入れられたら誰だって驚くし吐き出すと思いますけど……

 そんな事は誰もが思っているんでしょうが肝心の精霊達は全く思ってない様子。


『どうせいるぜのぽーしょんのんだらぜんかいするんだからさ』


 なんでしょう。続く言葉がとんでもなく不安になりそうな感じがします。

 なんか寒気しますし。


『てあしぜんぶへしおってあばれれなくしてからのませたほうがはやいんじゃないかな?』

『『『『それだ!』』』』


 恐ろしい発想です⁉︎

 そして同時にこの場にいる精霊ならやりかねないという確信が湧きます。

 あの瓶の中身のポーションが精霊達の言う通りハイエルフ様が作った物であれば腕や足が折れていようと元に戻す薬を作るのは簡単な事かもしれません。

 ですが! 負傷を治すために先に負傷を増産してから治療するのはどうかと思うのですが⁉︎


 同じ考えを浮かべたであろうトロワに目線を送り、一瞬にしてアイコンタクトを取ります。


 私が顎で近場の騎士をあおり、トロワがそれに頷いたのを確認して二人で同時に動きます。

 私は瞬時に拳に魔力を込め、トロワは脚に魔力を込めて跳躍し、近くの騎士の背後に音もなく着地をすると、後ろから羽交い締めにします。


「え⁉︎」


 いきなり身動きを封じられた事に騎士は驚いたような声をあげますが、そんな騎士の腹に私は容赦なく魔力の込めた拳を叩きつけます。


「ぐぇぇぇ⁉︎ がぁ⁉︎」


 殴られた事で大きく口を開けて絶叫を上げた騎士にすかさずトロワが手を伸ばし口を閉じれなくしています。


「せ、精霊様! ここに治療を待っている方がいらっしゃいます!」

「ううう! うう!」


 トロワが大きな声を出して精霊にアピールをします。口を無理やり開けさせられた騎士はというと呻き声を上げながら必死に首を横に振って否定していましたが再び私の拳が腹に突き刺さるのと、トロワが力を込めすぎたのか顎から嫌な音が響くと同時に意識が飛んだのかぐったりと動かなくなりました。

 周りの騎士達が何か言おうとしたようですが睨みつけて黙らせます。


 コウナリタクナケレバダマッテナサイ。


 騎士達は快く凄い勢いで首を上下に振って快諾してくれました。


『む!』

『ほんとうだ!』

『きけんなけいれんだ』

『めでぃっく! めでぃっく!』


 精霊達が慌てて近づいてきて、手にしていたポーションの瓶を勢いよく逆むけにして口の中へと注いでいきます。


 普通なら死にそうな傷でしたがポーションが注がれるたびに変な痙攣を起こしながらも目に見える場所にあった傷が時を戻すように治っていっていました。


「まじかよ」

「古傷まで治ってんじゃないのか?」

『これが!』

『えるふじるしのぽーしょんのちからです!』


 騎士達のどよめく声などを無視して精霊達はドヤ顔をしながらポーションを頭上に掲げるのでした。

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