来客編、裏側 エルフ、頭を下げる
爆発と共に凄まじい密度で構成された魔力の風が吹き荒れました。
今戦っていたレオン様や精霊達の魔力も凄いものでしたが、ど真ん中に落下してきたのは格が違います。
おそらくは本人は意識をしていないのでしょうが、体から溢れている魔力だけでも私達を圧倒しています。
そんな目に見える程の翡翠色の魔力を身体に纏いながら現れたのは小柄な少女でした。
エルフ特有の尖った耳、眠たげな瞳、セミロングの金の髪、そしてエルフ特有の服に見えるけど明らかに装飾の度合いが群を抜いている服。
あの装飾自体が魔法的な効果を持つと言われる失われた技術。
「アン、あれって……」
「えぇ、トロワ、あの方は……」
トロワの方も現れた少女の尋常じゃない力に気づいたのか声を震わせています。
そして無意識の内に膝を付き、頭を下げていました。
「どうした?」
レオン様が訝しげな表情で頭を下げる私達を見ています。
レオン様には魔力は見えてもあの密度の濃い翡翠色の魔力は見えていないのでしょう。
今目の前にいるのは確かに皇帝陛下が仰るとおりエルフではあります。ですが! 私達のような唯のエルフであるはずがないのです!
「団長様、あの方を怒らせてはいけません!」
私より焦っているトロワがレオン様に進言しています。
普段ならそういうのは私の役目なのですがトロワも必死です。
「あの方はエルフではありますが私たちのようなエルフではありません! あの尋常じゃない魔力量、ハイエルフ様、もしくはエンシェントエルフ様です!」
『なっ⁉︎』
皇帝陛下とレオン様が絶句しています。
それはそうでしょう。
エルフの上位種であるハイエルフ、エンシェントエルフなんてほとんど存在しない位に数が少ないのですから。
今、目の前にいらっしゃるエルフは確実に後者であるエンシェントエルフでしょう。
ハイエルフの場合は緑がかった金の髪と書物で読みましたし。
そんな風にエンシェントエルフ様を見ていると聖女様と契約しているらしい光の精霊がエンシェントエルフ様の周りにいる精霊と喧嘩をし始めました。
次々に光の魔法を乱射する光の精霊とそれを笑いながら軽やかに躱していく精霊、そして余波で吹き飛ぶ騎士や神官。
エンシェントエルフ様、陛下達の会話を聞いている限り名前はイルゼ様というようだけど飛んでくる魔法、かなり上位の魔法を風で軽々と防いでます。
いやいやいや! あんな簡単に魔法を防ぐなんて普通はできないんですよ⁉︎
一撃、かすっただけでもどうなるか恐ろしいくらいの魔力量です。
そんな精霊同士の応酬を眺めながらイルゼ様とレオン様はゲンナリとした様子で会話を続けています。
そしてイルゼ様の肩に何かが乗ってますって、竜ですか⁉︎ あれ⁉︎
しかもなんか親しげにしてます。
大きさからして小竜のようですがそれでも竜です。人の手に、いえ、エルフでも手に負えるような存在ではないはずなんですが……ですがエンシェントエルフならば別なのでしょうか?
ええ、やはり手に負えるような存在ではありませんでした。
小竜は空に飛び上がると光る球体を口から吐き出し、精霊、騎士、神官と全く容赦なく平等に攻撃し始めたんですから。
それを抑えようと虹色に輝く乙女の像も動き始めたのでこの場は更なる混沌と化しています。
更にそこにイルゼ様に匹敵するような巨大な魔力が頭上から落下。
虹色に輝く乙女の像をなにやら馬鹿でかい拳でぶん殴ってます。
もうなにがなんだかわからない。
結局その場は乙女の像が爆発し、周りに破壊を撒き散らしたあたりでそれによって生じた衝撃波により私の意識は現実から遠ざかったのでした。




