氷魔王と氷鬼
まぁ、見せてみよなんて言った割に、どんな固有魔法が身についたのか、俺は知らない……
ただ、ツバキいわく『ウチよりもあんたの特性を強めに引き継いどるかもな』と言っていた。
……暴走しやすいというわけだろう、じゃなければ封魔の指輪は付けなくていいはずだからな。
「いくよ!『氷鬼一体』!」
「……!ほうほう?」
凍てつく空気、パキパキと音を立てて凍りつく地面。
背中から生えた2本の腕は、うちの嫁さんのよう。
両方の角を氷が取り込み、制御する。
赤い角は氷に反射して煌めき、透明な角はただただ綺麗。
「……まるで……あぁ、だから『氷鬼一体』か」
「わかってくれたようで何より!」
何も持っていない腕を振ると、氷のナイフが飛んでくる。
それを回避、すると目の前に今度は氷の怪腕。
「っ!!」
鬼の腕力、高魔力密度の氷魔法、そして、しっかりと急所を狙う抜け目のなさ、どれをとっても厄介だ。
「……なるほど!修練を積み上げ、よくぞここまで鍛え上げた!
褒美に我が氷の魔王軍を見せてやろう!」
俺だって修行をしてこなかったわけじゃない!
俺がずっと見てきた俺の部下たちのあの姿を、再現、構築、そして動かす。
あの時に居た厄介な盗賊も、どこか抜けてる勇者も、皆、俺の手駒として動かす。
「わわっ!?やっぱりすごい魔力操作!」
軽く10を上回るその全てを操る……頭が痛くなってくるよ。
でも、固有魔法は使うと命が削れる……故に使えない。
だから、戦友に力を借りる、強敵にも、手段は選べん!
「……冗談だろ……!?」
その数分後、未だに立ち、こちらを見すえる氷鬼。
「やっぱり!どれもこれも動きが単純!」
「厳しい評価だね……なら、ちょっとやる気だしますか」
バサッとローブが音を立てる……
「まだ、本気じゃなかったの?」
「あぁ、まだまだ奥の手はある……氷は無限の可能性を秘めているんだからな」
あの氷の怪腕に触れると、その触れた部分が凍りつき、あっという間に砕かれる……
フブキを中心に渦巻く空気も、本来なら肺が裂けるような冷たさのはず。
「まぁ、これで最後だ、ドンと来い……父さんがぶっ倒してやる」
「!……私のセリフよ、それっ!」
そう言って飛び込み、こちらへ距離を詰め、拳を振るうその瞬間、フブキは結界の外へと押しやられた……
要約しよう、彼女はこの結界の中で死んだ。
「……相変わらずデタラメな魔法やな」
「これすっげぇ集中力とコントロールがいるからな!?
そんなずるいみたいに言うけど、ポンポン撃てねぇからな!?」
ツバキと談笑をして、大笑いをする。
この後、結果を聞いてランバートは
「我々相手によくやりました……まだまだ伸びしろはあると言えますね」
との事だ、メーラルは
「ふとした時に気を抜いているふしがありますね
あとは、その、奥手さ故に生まれる弱点もあることでしょう」
と言っていた、俺は
「……まぁ、普通に強くて焦った……それだけかな」
この日の夜、自分が何をされたのかフブキがなんども聞いてきたが……
「ま、自分で見つけることだな」
とだけ言っておく。
……実力は十分だな。
それを理解した俺は手紙を書き、封筒にしまう。
『ナイリーヘ』




