氷魔王 稽古の準備
「……あ、朝か?」
窓から光が入ってくる……うん、間違いない、朝だ。
「……朝ごはん作るか」
ワショクの料理にも慣れてきたものだ……みんなからすれば15年前のことらしいがな。
ご飯を炊き、味噌汁を作り、魚を焼く。
全く変わっていない台所……うん、いつも通り。
「……おはよう……お母さん……ネーヴェ」
「おはよう、フブキ、ツバキの奴はまだ寝てるよ
ご飯ならできてるよ、どうぞ」
「……ん、ありがと」
素っ気なく返す……まぁ、俺はツバキ起こしに行こうかな。
「……いただきます」
パチンと小さく手を鳴らす音
それに少し頬を緩め
「はい、どうぞ」
そう返した
「ツバキー!お!き!ろー!」
「……な、なんや?ネーヴェ……」
目をしょぼしょぼさせながら聞くツバキ……鼻をスンスンと鳴らしながらこう言う。
「朝ごはん……?」
「そう、昔っからその犬みたいな反応やめなさい……
フブキはもう食べてるよ」
「あいよー!」
少し乱れた服を正しながら椅子に座り、手を合わせ
「いただきます!」
「はい、俺も……いただきます」
「……くくっ……どないした?にやけて」
「いや……夢が叶ったからな」
「家族みんなでご飯を食べることか?」
「あぁ、アリスもいたらいいんだが……」
「……辛気臭くなってどないするんや」
「それもそうだな……フブキ、今日何か用事は?」
「……特に何も無いからガウちゃんの所行こっかな……って」
「ガウちゃん?」
「うん、私の友達……私もだけど……強いよ?」
「……へぇ?」
ツバキの方を見る。
「間違いないでー、強くなると思うわ」
「……よし、今日はその2人に稽古をつけてやる」
「……稽古?」
「あぁ、稽古だ、強くなりたくないか?」
「……な、なりたい……」
「なら、俺と戦ってみるといい
仮にも氷魔王……元世界最強なんだからな
こっちも、もう1人用意するよ……お前たちがアッと驚く人物をな?」
「……勇者一行や、ネーヴェの友達以外に?」
「あぁ、まぁまぁ有名だからな」
「……わかったわ」
「なら10分後、魔王城の訓練所に行こうか……あそこならいつでも貸切だ」
「そりゃ、ネーヴェのものだからね」
「だな……よし、ガヤは俺が呼んでおくよ、準備できたら門の前においで」
「……うん、わかったわ」
そしてウチの四天王……ザクラはいないが、そしてメーラルを連れて門の前に立つ。
「……お、いっぱい来たな」
フブキとガウちゃん?以外にも少年少女いっぱいいる
「あ!せんせーだ!」
少年のひとりがランバートを指さしそういう。
「はい、先生ですよ、皆さん今日は私はこっち側ですので」
「えぇー!ずるい!」
「先生いるなら勝てないじゃん!」
「ふふっ、でも、私も自分が仕えると決めた王ですからね」
悪戯っぽく笑うこのセンセー……
「ランバート……情けないなぁ」
「ふふっ、楽しくていいじゃないですか」
「さ、それじゃ、ランバート、あの2つ……用意できたか?」
「無論ですよ、ネーヴェ様、準備は万端にございます」
「ふっ……なら、まずは1つ目、我らを魔王城へ飛ばしてくれまいか?」
「かしこまりました」
王様らしい口調でそう命じる。
「これが『ホークレインの羽』にございます」
そういうと炎のような赤い光に包まれ……視界が開けるとそこは懐しい
「……魔王城、到着だな」
周りの子達はみんなドヨドヨしている……
「さて?それでは次は……あの魔法具だ」
「かしこまりました」
そう言うと淡い白のドームに包まれたエリアが生まれる。
そして……中に入ると体の周りに膜が張り巡らされる。
「この膜は……このエリア内ならどんな欠損をしようと、たとえ死のうとエリアの外に蘇ることが出来る……痛みは特に感じない」
「……その中で戦うってことね?」
「あぁ、そうだ……さぁ、上がってこい、氷魔王のフィールドにな」




