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魔王は隠居をやめる  作者: 春アントール
世界が揺らぐ
88/100

説明

「……アリス……ごめんな、最後の最後まで俺は頼りない兄だったかもな」


家の裏のお墓の前に立つ。

墓石には2年前の年が書かれていた。


お墓は毎日手入れされているのか綺麗なままだ。


「……アリス、俺から言えることは特にない……強いて言うなら、8年後、また会おう

……もしかしたらもっと早くかもだけどね」


そう言い残し、家の中に帰ってくる。


もう風呂は上がっているらしく、少し髪を濡らしたフブキが椅子に座り俺を待っていた。



ツバキはニヤニヤしながらソファーから顔をのぞかせチラチラ見てくる


「……早く座って、私も気にはなってるから」


「あぁ、待たせてごめんな」


そう言って椅子を引き座る。


「別に、それだけアリスさんを気にかけてはいたってことでもあるし」


「……そうか」


「それより……本題に入るわよ

どうして、15年も姿を表さなかったのよ?」


「……なぁ、フブキ、俺の寿命っていくつだと思う?」


「……何の話?」


少し苛立ちげにそういった


「……いいから、関係あるからさ」


「……さぁ?いくらでもとかじゃないの?」


「8年だ」


少しばかり食い気味にそう答えた。


フブキの顔は一瞬理解できないような顔をした後……


「……え?」


そうとだけ返した、そして直ぐに


「だったら……なんでなおさら家にいなかったのよ!?」


「……15年前、俺は自分の友達2人に寿命について話し合った

そして、その結果……残りの寿命が8年と気づき、自分を氷の中に閉じ込めて、ある種のタイムスリップをしようとしたわけだ」


「……じ、じゃあそれが、それが成功して今更帰ってきたってこと!?」


「まぁ、そうだね、じゃないと矛盾するしね

信じられないかもしれないけど、そうなんだよ」


「どうしてそんなことをしたのよ?」


「……自分の愛娘が成長途中にポックリ逝くのは悲しいからね

特に、8歳の娘だと……俺のこと覚えてくれてないかもだし?」


冗談気味にそういった


「……本当なの?母さん」


「うん、間違いないで

なんてったってウチが許可出したからな」


「!なら信じる……」


「……っていうか、フブキ、今ステータス見たけど、氷魔法、遺伝したんだね」


「!見えるの?」


「まぁね……これ、できる?」


Lvがやたらと低いのは……まぁ、俺の能力だからってのだろうね。


氷で剣を作って見せた。


「そ、それぐらいならできるけど……」


確かに、氷の剣を作っているな……


「よし、俺の剣にそれをぶつけてみろ」


「え?……えいっ!」


ボキンと折れた。


「あれ?なんで!?」


「なんでそうなるのか……俺がみっちりと教えてあげるよ

それが、俺が父としてお前に教えてやれることだ」


頭を撫でようとすると……避けられた。


「まだ……まだ、ネーヴェのことは父と思えない」


「……そうか、まぁ、徐々好かれるように頑張るよ」


「……おやすみ」


「あぁ、おやすみ、フブキ」


「おやすみー……久々に酒飲むか?ネーヴェ」


「……まぁ、そうだな、積もる話もあるからな」

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