解放と変化
「……っと、これで15年たったのか?」
氷から、解放され、地面に足をつける……
まるで眠って次の日の朝のような……その程度の感覚だった。
「……いや……変わってるな」
明らかに変わっている。
俺の住む町インセイト、タイルは削れ、店主は老けて、新築が多く立ち並ぶ……
ここを曲がれば俺の家……見慣れた俺の家とは違い、少しばかり年季を感じる。
ドアに手をかけ、押し開く。
キギギィと音を立て、ドアが開く……
「……ただ……っ!?」
家の中を覗いた瞬間、凄まじい勢いでナイフが飛んできた。
顔の目を狙い飛んでくるナイフ
その正確性は少しばかりランバートを彷彿とさせた。
次に来たのは拳。
俺が避けることを見越したその拳を受け止める……
「っぐっ!?」
重かった……まるで昔のツバキのような。
「今更何用よ?ネーヴェ」
「……フブキ……?」
白い髪、赤い目、透明と赤色の角……
「何がフブキよ!?
お前家をほっておいて15年も何してたの!?」
「あ、おかえりネーヴェ」
「あ、ただいまツバキ……久しぶりなのかな?
自分としては寝てたみたいなものなんだけど」
「そうなんや?まぁ、寝坊もしとらんしセーフにしたろ
15年ぶりやわ……ネーヴェ」
「ん?」
「いや……名前呼んだら返してくれるネーヴェがおるのが嬉しくてな」
「……そうか、ごめんな」
「……しゃーないことやん、ウチもそっちの方がええわ」
「……そうか」
なんて、話をしてると
「お母さんはネーヴェに甘すぎる!
なんでそんなやつのことを直ぐに受け入れられるんよ!?」
「まぁまぁ……それよりも先に言うこと、あるやろ?」
「言うこと?」
なんだろうか
「……まぁ、そうね……アリス叔母さん覚えてる?」
「あぁ、俺の妹のアリスだろ?覚えてるさ」
「……その叔母さんが死んだって行ったらどうするの?」
一瞬頭が真っ白になった
そして直ぐに理解した
「……寿命……か」
「……なによ、驚かないのね……」
「……純粋な魔族じゃない魔人のアリスなんだ……想定はしてたさ」
「……そう……なの
アリスさんはね、私のことをよく可愛がってくれてたのよ
私はそんなアリスさんが大好きだったの!
あなたなんかと違ってね!」
「そうだね……お墓、どこにあるの?」
「家の裏よ……でも話はまだ終わってないわ!」
「……なんだ?フブキ」
「あの人はね!死ぬ直前まで、あなたの事をよく言ってたわ!
あの人をそんなに悪く言わないであげてってね!
ランバートさんも、メーラルさんも、ナイリーさんも、アケガネさんも、みんな同じことを言うのよ!?
でも!家族を捨てて15年どっかに言ってたあなたが私の尊敬する方々の支持を得られるような人物には見えないわ!」
「なら、俺は……父さんはどうしたらいいのかな?」
「……父親ズラはやめて」
「フブキ……いくらなんでも」
「母さんは黙ってて……
あなたの話も聞いたわ、どんなに凄いことをしたのか!
この街を作ったのはあなただってことも私は知ってるわよ!
でも!どうして、私の、私たちの前に顔を見せてくれなかったのよ!」
「……ツバキ……まさかまだ、言ってないのか?」
「……そういうのはあんたの口から伝えるもんやで
ウチはしっかり知っとるからな」
「そうか……フブキ、明日用事は?」
「学校はないわよ、友達と遊びに行くのもないわ」
「……なら、少し墓に行ってくる……その間に風呂にでも入っておけ
そのあと、じっくりと話す
ツバキの……母さんの教えなかったことをおしえる……それでも信用ならないならランバートにでも、メーラルにでも聞くといい」
「いいわ、わかった」




