大失踪事件
その一週間後、帰ってきたら手紙の内容は……いや、そもそもザクラ宛に送った手紙を返したのは『ローズさん』だった。
「……?………ん?」
手紙を読んで、その感想がこれだ。
別にローズさんの文字が汚い、文がぐちゃぐちゃで読めないなんて訳では無い。
書いてある内容が理解はできるが……それが難しい。
『ネーヴェ様、申し訳ございませんが
ザクラは今現在行方不明でございます
申し訳ございませんが手紙の中身を少し拝見してしまいました
こちらの手紙は夫が帰ってくるまで、しっかりと厳重に保存しておきますのでご安心を』
「行方不明……ザクラがか?」
竜王となったあいつの実力はこの目で見た……
そのアイツがまさか……?
愛する妻と娘がいるのにも関わらず失踪だと……!?
「ツバキ……これ」
「んー?ローズさんから?……は?」
ツバキにまだ俺の命があと僅かなのは黙っている。
「……どういう事や?」
「わからない……俺にもさっぱりだ
あのザクラが消えることなんて……まさか夢にも思わない」
「やろうな……うちもそれは同じや……探しに行くんか?」
「探しに……か?
……いや、それは別にいいよ、それはあいつを一重に信頼していないと同義だよ」
「ま、そやな、100年以上一緒におったんや
それに、みんなわかっとる……あいつ以上に諦めの悪いのんはおらん」
「そうだな、俺も何度も倒しても立ち上がったあいつには驚いたよ」
そんなアイツが……まさか失踪した程度じゃ死ぬわけはない……
「ちょっとフブキとお散歩行ってくるわ……行こかーフブキー」
にっこりと笑いながら娘を抱え夕方の街へ向かう。
「行ってらっしゃい」
「ん、行ってくるわ……ご飯、頼んだで?」
ピシッと指を向け、ふざけた様子でそういう彼女
「まかせろ」
ザクラを心配している様子は無い……無論俺もだ
薄情だからじゃない……信じているからだ。
さて、時間もたった……今日はどんな献立にしようか?
なんてことを考えていると、またひとつ、ドアを激しく開け放つ女性と、鋭く耳に聞こえる声にまたもや呆然とする他ない




