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魔王は隠居をやめる  作者: 春アントール
ウェイパー盗賊団
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共存の街 インセイト

「……ツバキ……ここが今日から、俺たちが住む街で、これが家だ!」


指さし、声高らかに言う。


「しー!静かに!起きちゃうやろ」


「っとすまん……ごめんよ、フブキ」


ツバキが抱っこしている赤ちゃん……名前はフブキ。


アリスが名前をつける時に手伝ってくれた。


吹雪は雪の意味も吹雪鬼とも呼ばれ、2人に綺麗にあっている。


かなり前から考えていたらしく、速攻で決まりとなった。


そして、この街インセイト

ミーヤ ノエル エルナ カーラのふたりの日記にあった


『共存の街』


魔族と人間と亜人が仲良く暮らしている俺の理想そのものの街。


後に聖女に潰されたそうだが……俺が蘇らせた。


この街で俺たちは生きると決めた。


……初めての夜はかなりグダったから思い出したくない……いや、あの初々しいツバキが見れるなら……なんでもない


「フブキ……この子はどんな子になるんやろなぁ?」


「さぁ?ね」


俺に似た白い髪と透明な角が1本

ツバキに似た赤い目と赤い角が1本


「……どっちに似るかな?」


「どっちにもにないかも知らんよ?」


「ははっ、そうかもね、とりあえず今日はお祭りだ……楽しもう」


インセイト生誕祭だ。


夜になってもまだまだ明るかったこの街で、勇者達と俺とツバキが少し静かな場所に集まり、雑談をしている


「ツバキさん、フブキちゃん抱っこしてもいいですか?」


「聖女様になら抱いて貰ったらいい事ありそうやな」


ヴェールさんが優しく抱いてニコニコと笑っている


微笑ましい限りだ。


「……やっと見つけました!

あなたがネーヴェさんですね

それに勇者様方一行」


突如現れた謎の女


辺りの光に反射し、綺麗な金髪碧眼の少女だ。

けどその明るい色とは対象的な黒のイヤリングをつけている。


「……君は?誰だい?」


「っと、申し遅れました、私の名前は……

『マイン ウェイパー』です」


そうその少女が名乗った瞬間、椅子から飛び上がり、戦闘態勢に入る。


背中にツバキを置き……命に変えてでも守る!


「……ウェイパー……クロンの団員か……仇討ちか?」


「……あの盗賊の所のやつか……厄介やな」


「戦うつもりはありませんよ

それに、わたしはその時団員じゃないんですよ?

そのクロンさんに入るのを止められていたんですよ

まぁ、今はウェイパー盗賊団……最後の生き残りですけどね」


「もう一度聞く……何の用だ?」


「あなた方にとって、ウェイパー盗賊団って、どんなのだったんですか?

……本当に……ウェイパー盗賊団は壊滅したんですか?

新聞に……クロン ウェイパーの名前はただのひとつも出てきていません……どうなんですか!?」


真剣なその瞳が少し涙で潤む。


「……ウェイパー盗賊団は厄介な敵だった……強かったよ

特にクロンはな……勝てたのは本当に運が良かった……なあ?みんな」


偶然にも、ここにいる全員があの男を見た


「……あいつは……えらい強かったわ……」


ツバキも思い出し、苦い顔をしている。


「……そうですか、ならもうひとつの質問を

ウェイパー盗賊団は?どうなったんですか?」


「間違いなく壊滅させた……少なくとも、クロン以外の団員は確実に息の根を止めた……クロンは殺す暇がなかったから瀕死にしただけだ……」


「……そう……ですか

……ありがとうございました、質問に答えてくださって」


「……あんたは……盗賊のヤツらのなんなんや?」


ツバキが聞く。


「……かの英雄に憧れた1人の人間ですよ」


そう言い残し、後にする

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