クロン ウェイパーの生きた証
「……クロンさんの手紙、読もっかな」
『これを見てるってことはきっと死んじまったんだろうな
マインちゃん、約束守れなくてごめんね頭が上がらないから頭を取ってくれてもいいよ?
本当に取れてるかもねー』
「?頭を取る?グロテスクだなぁ……」
『ひとつ話したいことがある
きむずかしい話じゃないよ
だって俺の書いた文だからね
しかたないよ
のびのびしてた頃に書いたやつだから
なかみはきっと君のためになる
かみさまのほざくことよりもよっぽど確かだよ
にっこりと笑って逝けそうだよ
みんなには謝らないとだね
らくな謝り方なんてないから
いしをもってしっかりと謝るよ
たくさん迷惑をかけたねごめんね
くせつ1年間
す晴らしい1年だったよ、ありがとうみんな』
その手紙を読み終わり……1分ぐらいした頃、私は走り出していた
「村長さん!!」
「ま、マインちゃん?どうしたんだい?」
「クロンさんたちの家の鍵!貸してください!」
「い、いいよ?」
渡してくれた鍵を奪うようにむしり取り
「ありがとうございます!!」
そのまま勢いに任せ走り出す
ドアにかかった鍵を開き、クロンさんの部屋のドアの鍵も開け、中に入る。
1つの机と蝋燭台。
横長の引き出しを引き……中を覗く。
「やっぱり……あった!」
黒い表紙のノート
「……日記帳……?メモ帳かな?」
その日起きたことかと思えば、色々なことがメモされている……不思議なノートだ。
「……あ……」
パラパラとめくるとふと、手が止まった。
『あんな謎解き、謎にもならなかったかな?
俺の言う未来は君だよ、君に未来を託す、このノートと、その中の俺の、俺達の意志を持って行ってくれないか?』
「……もちろんですよ……!」
ノートにそう返事をする……
「……母さん、父さん、村のみんな、今までありがとうね、私、王都に行くよ」
「行ってらっしゃい、マイン……元気でね」
「いつでも帰ってきていいからな!」
「……彼の言っていた通りだね」
「?村長なにか?」
「クロンさんがね『もし、マインちゃんがこの村を出る時……これをあげてやってくれませんか?』って言われてたんだよ」
そう言って手を前にやり、封筒を渡される。
ずっしりとした感触……中にはイヤリングと一枚の紙
『行ってらっしゃい、マインちゃん
そのイヤリングはウェイパー盗賊団の証だよ
本当に入る訳じゃなくていいけど、余ったからあげるよ クロン ウェイパー』
「裏にも何か書いてるわよ?」
母さんがそう言った
「へ?」
裏を向け、文字を読む
……この文字はアインさんかな?
『表のはクロンの照れ隠しよ
余るわけないじゃない、金策に余裕ないのに……
あなたの事を大事に思ってるのよ
それつけてたら舐められることはまず無いわ、何より、クロンの手作りよ……いいお守りになるよ、マインちゃん
行ってらっしゃい ウェイパー盗賊団一同』
その文字を見てクスリと笑い。
イヤリングを両耳につける。
黒をベースに、赤い龍のような紋様。
「……ふふっ、似合ってるわよ?」
「ありがと!それじゃ、行ってくる」




