仕事
「……まじかよ……アイン」
アインの方を向くが真剣な顔で頷くだけだ
彼女は本気だと言う意味のようだ。
「……なるほど……なら、仕事は受けさせてもらうよ……魔王軍四天王の……ネクロ カースさんよ」
「ありがとうございます、クロンさん」
差し出した手を取り、握手する
魔王軍の、幹部がある日この村を訪ね、こういった
『我々魔王軍の依頼を受けてください……
城の中に来るであろう男たちを……勇者を殺してください』
「……勇者殺し……か、悪党の名にふさわしくなってきたな」
「勇者殺しの盗賊団……ウェイパー盗賊団……
いい響きだね、だんちょ」
「そうねぇ……クロン、頑張りましょうね」
「俺たちの名を……歴史に残すときが来たようだな」
「そうだな、話ではまだ時間はありそうだ、3日後、ここを出る……支度をしろよ」
「んー!りょ!」
「了解」
「……同じく、了解だ」
団員たちに話すとすごく驚いたような顔をしていた。
「次の仕事は命の保証はない……それでも、俺たちについて来てくれるやつはいるか?」
そう仲間たちに聞く……
「団長がいなくなったら俺たちどこに行きゃあいいんですか!?
もちろんついて行きますよ!」
「俺もだ!」「私も!」
「……そうか、ありがとうな!お前ら!
んじゃ、さっさと寝とけ!」
そのまま勢いに任せ家を出る……
「散歩するか」
ポケットに手を突っ込み、冷える村を歩く
……この村に住み着いて早1年……
「あ、クロンさん!?クロンさーーん!」
「ん?……あぁ、マインちゃんか、どうしたの?」
「み、3日後いなくなっちゃうんですか!?」
「大袈裟だな、いっつも仕事の時はいなかったでしょ?」
「で、でも……次は勇者様と戦うって……聞いて!」
「あぁ、そうだな、俺たち盗賊にふさわしい相手だ」
「……クロンさん……死なないでね」
「……ごめん、死なないとは言えないよ……
でも、俺は死にたくないさ、いつだって生き延びることを目標として生きているんだ」
……そう、いつだって……俺たち4人は僅かな可能性の糸も手繰り寄せ、生き長らえてきた。
あのゴミ捨て場でも……変な種やおかしな生き物を食べてでも生きのびたんだ……
「……クロンさん……死なないで!」
マインちゃんが俺に抱きついてくれる
「……ははっ、参ったね
未来の英雄様に抱きつかれちゃったよ
君の伝記を書く時、俺の名前、乗っけといてね」
頭をポンポンと撫で、誤魔化し
「……マインちゃん、もう一度言うよ、俺は……俺たちは悪党の、盗賊団だ
それを忘れちゃいけないよ
君は俺たちの世界には入っちゃいけない」
「……でもっ!」
「ダメだ……ごめんね、でも……いや、なんでもない」
『君のため』なんて恩義せがましい綺麗事……
「俺たち汚れ役には似合いやしないな」
ニヤリと口を歪め皮肉を言う。
「……さぁ、クロン ウェイパーの盗賊団……終幕へと駒を進めますか」
予感があった……死ぬ予感が……
「はっ、未来予知の類は知らないはずなのにな」




