お気に入り
「……だーんちょ!」
「ん?メルナか?どうした」
「随分あの子のこと気に入ってるねぇー?」
ニコッと愛らしい顔を近づけてくる
「……人並みにはな」
「嘘は良くないよ、クロン」
「アイン……目を……見ちまったァ!!!」
「……そもそも、なんでもないやつのために涙を流せるほど、クロン、お前は器用じゃない」
「うるせー!ってかグゥェルてめぇもなんか文句あるのか!?」
「クロン、ほんと、あのこのこと気に入ってるのね」
「だね……だってさ、グゥェル、覚えてる?」
「……無論、覚えてるとも」
「あの時、約束として言った言葉……あれって、クロンがメモ帳に書き留めた言葉でしょ?」
「っぐっ……なんで知ってんだよ……」
「昔ね、英雄目指してる時に……クロンうたた寝してたから手帳ちょっと拝借してたのよっ」
パチンとウィンクしながらアインが言う。
「……あぁ、もう、なら隠さねえよ
そうだよ、俺はあの子を気に入ってるよ……
そして、できるなら……あの子が英雄となる時……最後の障壁として立ちはだかってあげたい」
「……クククッ」
「ふふっ」
「……フッ」
うちの幹部が不敵に笑う
「な、何がおかしい……!?」
「立ちはだかってあげたい……だってさアイン」
「えぇ、本当に……私と目を合わせてるの、忘れた?」
「……目を合わせずとも……十二分に伝わるがな」
「……まじかよお前ら」
「「「散る時は一緒だからな」」」
見透かされていた……最後にあの子に殺されて一生を終える気でいるのを……
「……お前ら……ははっ……流石は……お前らだ」
「変わんないねー!だんちょは!」
「そうね、本当に……英雄がまだまだ諦められないんだってさ」
「……最後のページにふさわしきちりざまを見せてやろうとも」
「……やっばり、俺は大悪党だな」
「ふふっ……あの子、泣いて悲しむわよ?」
「……優しいやつも、誰かの中じゃ悪人さ
英雄は誰かの助けになるものなんだからな」
「……クロンが英雄にならぬようになった理由……今の俺たちなら分かるぞ」
「ははっ、グゥェルらしくねぇな、ほら、飯食うぞ……」




