古き日の記憶
「……それで?私にどうして欲しいんだ?」
金色の髪、赤い目……整った顔
それらがこちらを睨み、威圧してくる
「……女の癖にずいぶんと勇ましいな、勇者」
「ふん、性別の話ならお前の相棒も同じだろう?氷魔王」
「はっ、確かにな」
昔昔のある日のこと、世界平和を求めていた魔王と勇者がいた
勇者は魔王を滅ぼし平和を
魔王は全てを統一し平和を
同じようで真逆の信念を掲げた2人が一触即発の空気の中話していた。
「ひぇー、案の定ギスギスしてんなぁ?」
「ん?それウチに言うてんの?」
「……はぁ、そうだよ……」
「……それで?私をこんな所に呼び出した理由はなんだ?まさかこんな戯言を話に来たわけじゃあるまいな?」
「あぁ、そうだとも、お前にとっては戯言に聞こえて笑えるかもな、勇者よ」
「……言ってみろ、魔王」
「……俺は世界平和を祈っている……
だから、人間と魔族のトップの俺達が仲良くなって、そして、長きに渡るこの戦いを終わらせよう」
「……それは……なるほどな」
「?何だ?」
「いや何……私もおおかた同じことを考えていたものでな」
「……本当か?」
「あぁ、本当だ……だが、お互いがお互いの種族に不利益のないように……お互いの力を封印しよう」
「……それはもうしているな、俺は自分の力なら封印しているとも」
「!?それは意外だな……だが、なら好都合だ……
私の方から王に進言してくる」
そう言って部屋を出ようとする勇者
「まて、これを持っていけ」
「……これは?」
「1枚は王へ俺直筆の手紙
もう1枚は俺の力の封印場所だ
筋力、魔力、スキル、全てをその3箇所に封印している
固有スキルは少し特殊なところに封印する予定だ……今はまだ、どうなるかわからないからな」
「……そうか……礼を言う、魔王、お前が私の代の魔王で良かった」
「俺もだな、お前が勇者でよかった」
2人とも固い握手を交わし、部屋を出る
帰ってきた勇者の顔は人目で結果がわかった
ものすごくニコニコしていた
「まおう!きけ!」
「な、なんだ?」
「王から休戦の要求と平和条約が認められたぞ!」
「……そうか、良かった……」
「……そう言えば、こうなれば私とお前の関係とはなんなのだろうか?」
「……さぁ?ただの魔族と人間だろう」
「……それもそうだな、ネーヴェ」
魔王ではなく名前で呼ばれ驚く
「!……なんだ?……フューチ……」
だから名前で呼び返した
「もう一度言う、お前が魔王で本当に良かった」
「……なら俺ももう一度言う、お前が勇者でよかった……これで、俺の固有スキルと別れられる……」
「そうなのか、なら……そうだな、私も手伝ってやる」
「!いいのか?」
「これからはお互いが手を取り合う時代だ……私たちが見本にならなくてはな」
「……そうだな……フューチ」
「はははっ!これがトモダチというものか……いいものだな」
「そう言えばいっつもひとりで旅していたな、なんでなんだ?」
「純粋に魔族=悪、と決めつけているものと旅をしても得られるものがないと思っていたからだ」
「……そうか、それじゃあ、行こうか」
「あぁ、ついでにあそこにも向かおう……私も戻すものがある」
「そうか」




