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魔王は隠居をやめる  作者: 春アントール
最後の封印を解除すべく
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古き日の夢 王を取り戻せ

「さぁ!あの王を落としに行くぞ!」


「それは無理だ、今のネーヴェはすべての潜在能力を絞り出しているようなものだ、戦って勝てる確率は限りなく低いな」


「じゃあどうするよ!フューチ!」


「……MP切れを狙おう、ネーヴェの最強の魔法……『凍てつく(オーバーフリーズ)世界(ワールド)』はものすごい勢いでMPを減らすから……全員で一気に襲えば、あれを使うと思う……ただ、死を覚悟しないといけないね」


「そやな、あれ食らったら流石に死ぬわ」


「ですね、私もあれは再生できません」


「……我も、無理だな」


「……流石に溶けないよな……」


「……貴様ら……勇者と、それに与するものよ」


「……ネーヴェ……喋った?」


「口調おかしくない?」


「我の分身を倒すとはなかなかやるな……貴様らに敬意を表し、我みずらの手で……殺してくれるわ!」


「……殺意MAX……じゃん」


「というか、あいつがマジで殺しにくるの……初めて見るかも知らんわ」


「……確かに、それもそうだな」


「貴様の言う通りかもしれんな」


「ですね、いつも、どこか優しかったですから」


「凍れ」


1つ、呟くと、足元から冷気を発し、当たりを凍らせる。


「……雑兵が、アンデットごときが我に勝てるとでも?」


「……ウチもおるんやでっ!」


「鬼か……だが、軽いな」


「腕がっ!?」


パキパキと音を立てながら凍り始める。


「ツバキさん!……私の固有スキルは味方にも影響があるから……投げナイフで援護をします!」


「投げナイフ……腕は確かだが……足りないな」


「とりあえずツバキを離せっ!」


「竜……か、パワーはあるが……荒削り……弱いな」


軽くあしらい、一蹴する。


「私が……っ!」


あっという間に殺される、そんな未来を見た


「……来ないか……勇者を早いうちに殺しておきたかったのだがな?」


「離せや!」


「動きが丸わかりだ……お前はもういい」


ブンと片手でツバキを放り投げる。


森を破壊しながら遥か遠くへ消えていった。


「竜……貴様もくだらんな……しかし、貴様ら数が多くて鬱陶しい……『凍てつく世界』」


「……来たっ!ザクラ!離れろ!」


「わかってる!」


「……防げるか?」


氷の範囲はどんどんと広がり、この森をすっぽりと飲み込んでしまうほどに。


辺りが真っ白になり、何も見えない。


2分ほどした後、雪は消え去り、そして、凍りついたフューチとザクラ。


フューチは人間なだけあってネーヴェよりも先に助けることにした。


ザクラは……ほっておいても別にいいだろう。


そして、何とか死者は出さずに止めることが出来た。


あの時のネーヴェが短気なやつじゃなかったら……考えるだけで恐ろしい。


そんな、昔の記憶。

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