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魔王は隠居をやめる  作者: 春アントール
過去の王位継承戦
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休憩と情報屋

「えー!この王位継承大会も半分が終わりましたので、只今より、2時間の休憩を設けます、各自、自室でゆっくりするもよし、他の選手に話に行くのも構いません、ご自由にお使いください」


そして与えられた部屋に入り休む……


「……落ち着かない……部屋が綺麗すぎる……」


なんてボヤいているとノックの音が聞こえた。


「ネーヴェ君!アリスだよ」


「おぉ、アリスか、どうぞ」


「はーい、失礼しますっと……うわぁ……何この部屋……綺麗」


「だよな……あ、パン食べる?」


「わ!美味しそー!いただきます!」


「どうぞ」


お互いこの部屋には似合わない貧相な身なりだが……あと3回勝てば俺は晴れてこの国の王だ。


「どう?勝てそう?」


「もちろん!……と言いたいところなんだけど……やっぱり不利だね」


「不利?なにが?」


「情報戦だよ、この大会、必勝法はないけど、限りなく勝ちへ近づける方法ならある」


「え!?ほんと!?じゃあなんで不利なの?」


「ここは同時に試合をするんだ、各戦いに自分の仲間がいたら、それだけで口だけでもいいから、どんな魔法を使うかとか、初見じゃなくなるんだ」


「……ってことは友達が多い人ほど有利ってこと?」


「そうだね、それに『連れは優先的に座席が貰える』っていうのも上手いこと出来ているね」


「……!確かに!仲間を参加させやすくなるもんね!」


「そう言うこと、アリスみたいな純粋な気持ちで見に来た人にも、本気で魔王をめざしている人にも、両方共に嬉しいサービスだ

だから、とある人物を雇っていたよ」


「?誰?」


「……いるだろ?入ってこい」


「失礼します」


「うわぁ!?誰!?」


「この女の人は記憶を見たり、見せたりできる能力を持っているんだ

それを利用して、1人、マークしていた人物の戦いを見させてもらうんだ」


「へ、へぇ?」


「……あんな依頼のしかたをしていたのはあなたが初めてですよ」


「?どんな依頼したの?」


「まず、俺がこの大会に入ってから、観察対象を決める

もう一個が……他の人物に俺の情報を売らないこと」


「行き当たりばったりな話だし

情報を売るのが私の仕事なんですけどね……」


「この大会が終わったら言い値で売るといいよ、なんて言ったって、世界で2人しか知らない魔王の能力の全貌を知ってるんだからね」


「……それもそうだね、相変わらずすごい自信だけど、それが本当になったら確かに大儲けだ」


「だから雇っているのはあなただけなんだよ

2人3人と雇えば……価値が薄くなる、そうだろ?」


「まぁね、でも、私としてはダークホースの能力を知っているってだけで万々歳だけどね」


「……まだ、力隠してるのは見せただろう?」


「……うん、見たよ、びっくりしたけどね」


「なら、まだまだ上へ行くさ」


「期待してるよ、ネーヴェ君?」


「こちらこそ、それじゃ、あなたが見た物を俺にみせてくれ『マルキア』さん」


「わかったよ、頭触るね?」


「どうぞ」




「……なるほど?これが全力な訳は無いだろうけど……うん、対処法は見つけたよ」


「へぇ!?動き見えたの!?」


「ま、まぁね?

結構動きが早いし、何よりも……やっぱりこの人が一番危険かもね」


「しかし……なんでまた『出来損ない』なんて呼ばれているあの方の偵察に?」


「言ったじゃないか、一番危険だからだよ」


「?私としてはあのお二人の方がよっぽど強いと思うけどなぁ?」


「いーや?間違いなく1番の強敵はこの人だ」


「ふーん?まぁ、そうなんだろうねー

私はあとはゆっくり観戦しとくよ、いい席貰ったしね」


「そうか、ありがとうな、マルキアさん」


「うん、頑張ってねー、私の儲けにかかってるから」


そう言って手をヒラヒラさせ去っていく

最後まで掴みどころのない人だ……


「……あの人お金のことばっかり考えてるね……」


「そういう人の方が案外裏切らないから信用できるんだよ

それじゃ、ご飯食べようか」


「食べ過ぎはダメだよ?」


「わかってるって」

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