王になりたくて
「……よし!アリス!俺決めたよ!この長年の戦争終わらせる!」
「えぇ!?ネーヴェ君本気!?」
「あぁ!本気だ!こんなくだらん今の世界なんぞ変える!」
「……で、でもそれって王様の言うことの真逆だよ?いいの?」
「……アリス、君は現状に満足してるのか?」
「……そ、それはしてないけど……」
「……なら、俺が変える!納得いかないことがあるから変えてみせる」
とある魔界の辺境のあばら家の中でまだ10歳の2人の少年少女がそんな話をしていた。
久し振りの大雨、外は真っ暗であばら家も真っ暗、そして部屋の中にポツポツと雨漏れ。
「で、でもそんなこと王様にしか決めれないよ?」
「……5年後の魔王選挙に俺が出る、強いやつが魔王になれるのなら……俺が強くなる」
「……わかったよ、ネーヴェ君のお手伝い私するよ!」
「よし!なら頑張るぞ……!」
その日から、何度も何度も森に足を踏み入れ、力を付けた。
5年間、休むこと無く鍛えた。
そのおかげで狩った魔物の肉などを売ってお金を稼ぎ、貧乏な暮らしはしなくて済むようになった。
「はぁ……街の大人たちも、俺がモンスターの部位を持ってきたら殴ったりもせずに物を買い取ってくれる……まぁ、絶対安めに買ってるんだろうなぁ……」
「そうかもねぇー、でも、すぐに見返せるよ」
「……だね、いつもありがとうな、アリス」
「何よ、急に……まぁ、私達は似たもの同士だもんね」
「……だな、さ、ご飯食べようか」
「うん、いただきます」
誰も辺に住んでいない辺境のあばら家。
3年前にはなかったいい匂いと柔らかい灯り、談笑の声、屋根にある修理後のある屋根。
今日はこの大雨の中、雨漏れなんてしていない。




