西の国で
「……へぇー?さすがに力を封印したって言ってもウチと昔はいい勝負やっただけはあるなぁ!?」
「……っぐぉぉあ……」
馬鹿げた破壊音と霞む前方に見えるへし折れた何十本もの木々、そんなはるか先から馬鹿みたいに元気な声が聞こえてくる。
「……あーあ……まぁ、こうなりますよね」
時は遡ること数分前
結局来てしまった朝にガックリとしながら西の国へ向かう。
鬼の住む国シュレンド
鬼人と言う種族の奴らが住んでいる国だ。
100年前はお世話になったものだ……
「!白い髪の魔族……ネーヴェ様でお間違いないでしょうか?」
「……ん?」
門番の人に入れてもらうよう話そうとするよりも前に、向こうの方からアクションがあった。
「あ、この国の実質的なリーダーの『ツバキ様』から見つけたら教えるようにと……」
「……あぁ、アイツか……」
僕が今や唯一『アイツ』呼ばわりする相手だ。
「……少々お待ちください!」
「あ、はい」
そう言って待つこと2分ほど
高速接近してくる何か。
それが一瞬であいつだと分かった
「ネーーヴェェ!!あんたよくここに来れたもんやなぁ!」
「やっぱりお前か!ツバキィ!」
反射的に氷壁を作り出しその拳を止めようとするが……まるで紙のようにいとも容易く破られた。
そのままの勢いのまま思いっきり殴り抜かれる。
そして、回想終了だ。
「……っ!てめぇ!!ツバキィ!」
「カカカッ!今のあんたがウチに勝てる思っとるんかぁ!?」
「なんだってあんな威力でぶん殴ってくる!?俺死ぬぞ!?」
「ネーヴェ!口調!元に戻ってる!」
「あぁ!?……あ……んんっ……
あの威力だと全盛期の俺でもまともに食らうとやばい威力だぞ?何考えてるんだ……いきなり本気で殴りかかってくるなんて……」
「?本気?何言っとるんや?ウチやって100年誰かさんみたいにボケーッと過ごしとった訳ちゃうんやで?
今は昔のウチよりも2倍は強いで?」
「……お前な……昔の俺は固有スキル使ってなかったから別に俺は負けてねーし!?」
「何を屁理屈言っとるか……上手いこと扱えんかったあんたが悪いんやろーが……」
「……中々痛いとこついてくるな……性格ワリーぞ」
「はんっ!ウチの言う事聞かんと無視して事を荒らげた奴が何を!」
「……いや……あれはすまんかった……」
「ふん!今更謝ったってウチは許さんで!」
「……ツバキちゃん?」
「!その声はアリスか!?お!ザクラにローズもおるやんか!懐かしいなぁ!ささ!ウチの家おいでーや!」
「お、おう……ネーヴェ……大丈夫か?」
「……無理……色々折れた」
心と骨が折れた……
「そ、そうか、それじゃあ先に行ってるわ、治ったら追いかけてこい……」
「おう……」
四天王最強の名は伊達じゃないな……




