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第五十三話 リディア王国へ

はい、続きをどうぞー。

 リディア王国の王城にて、クリスチャス王子はいつものように地下室で拷問を楽しんでいた。拷問が趣味で老若男女の人間を鉄で出来た鞭を打って悲鳴を心地良く鳴らしていた。


「くくっ、いいね。いいね! その悲鳴!」

「よく飽きませんね。その趣味」

「あははっ、飽きる? それはあり得んな。人によって、悲鳴や身体に打つ感触が違っている。毎日、違う食事を取っているようなものだからな!」


 クリスチャス王子の護衛を勤めている人はその感想に理解できないと言いたそうな表情を浮かべるが、止めようとは思わない。クリスチャス王子の言う通りにしておけば、自分達はクリスチャス王子の護衛として、高い報酬を貰えているのだから、逆らって外されることはないように気を付けている。

 拷問を続けていたら、別の護衛が地下に降りてきて、慌てた様子でクリスチャス王子へ何かを伝えようとしていた。


「く、クリスチャス王子様! 魔物の群れがリディア王国へ向かって来ています!!」

「はぁ? ただの魔物の群れで叫ぶな」

「し、しかし! あの魔物は普通ではありません!! 外を見て頂ければ、わかりますので!!」


 ――――普通ではない? その意味が解らなかったので、拷問は途中で止めて上へ上がった。ベランダの方が見やすいということで、三階まで上がり、外を確認してみた――――


「なんだ、これ? ……確かに、普通ではないな」


 クリスチャス王子の眼に映ったのは、魔物としか思えないが魔物と言うには異様過ぎた。リディア王国へ向かってこようとしている魔物は全体が黒くて、黒い森がそのまま向かっているようにしか見えなかった。


「この数は、聖騎士と竜騎士を全て使わないと抑え切れんな。あと、勇者も動くように指示を出しておかないと……」


 黒い生き物は見ただけでも、数万はいるので国と国の戦争レベルだと判断した。使えるものを全て使って、やらなければならないとクリスチャス王子は周りに隠していた能力も使うことに決めた。


「数分は冒険者に任せ、聖騎士と竜騎士を王城前に集めろ。すぐにだ!!」

「は、はい!!」


 今のリディア王国は十歳程度しかないクリスチャス王子によって動かされている。国王は病気という名でクリスチャス王子が弱い毒を使って、弱らせていて床に伏せている。女王は戦争に対する指揮――――それどころか戦いの経験がない。だから、第一王子のクリスチャス王子の名を持って、戦争の指揮に当たる。


「ちっ、ここまでの魔物は初めてだが、襲ってきたのは初めてだと思うなよ?」


 去年、今のように多くはないが、魔物の群れが攻めてきたこともあったが、クリスチャス王子が戦争の指揮を執ることで、勝利を得られたことがある。

 勝って、『狂王の勇者』と言う二つ名を得たのはその時だった。今回は前回にやった戦法だけではなく、隠していた能力も使う予定で、負ける未来は見えていなかった――――








「我が眷属よ。全てを踏み潰せ、壊せ、殺せ、何も残すな!!」

「「「「「GASYAAAAAAAAAAA!!!」」」」」


 アリスは黒い生き物に指示を出して、リディア王国へ向かわせていた。この黒い生き物はアリスの新しい能力、『眷属増殖』で作り出した物だ。


「これは、死体集合体に似ていますね」

「材料はゴーレムとほぼ変わらんが、操作で動くゴーレムと違って、破壊衝動を持って何でも喰らい尽くす存在だ」


 様々な形があり、ほとんどが二体以上の魔物を混ぜ合わせたような造型になっている。何処から見ても、ゴーレムのように土が材料だと思えないぐらいに、グロくて生きているように見えている。もちろん、材料は土だけではない。


「んー、土と闇の残滓と俺の魔力だけで出来ているように見えないな」

「闇の残滓は研究していますが、完全に解明されていません。闇の残滓は千年前から突如に現れた魔力であり、何処から現れたのかもまだ不明となっています」

「そうか。何かわかったら教えてくれ。俺は闇の残滓を使っているし、副作用が出ると不味いからな」

「了解しました」

「では、バトラ、マキナ、ヨハン。雑魚は眷属に任せて、俺らは勇者をやるぞ」

「勇者はあの王子を含まれば、四人だったね」

「はーい、勝って見せます!!」


 今回はマキナのゴーレムは使っていない。ゴーレムがいなくても、操作が必要ない眷属を使えば、マキナも操作に気を取られずに全力で戦えるようになる。


「行くか――――」








 リディア王国は地獄だった。アリスの眷属は冒険者のランクで言えば、A~Bランク相当だったので、初心者の冒険者が多いリディア王国では人間の死体が増えていく。眷属の数は一週間も準備に掛けたので、二万はいる。リディア王国にいる冒険者は全体人口の半分ちょっとになり、一万もいない。そんな時は、冒険者より強い聖騎士や竜騎士の出番だが――――まだ前線に出てきていなかった。


「くそったれぇぇぇぇぇ!! 聖騎士と竜騎士はどうしている!?」

「む、無理だ! この数は多過ぎる!!」

「死にたくねえよぉぉぉぉぉ!! 喰わないでくれぇぇぇ!!」


 リディア王国のそこらに悲鳴が上がっていく。眷属は戦いが出来ない民衆であっても、容赦はしない。眷属は破壊衝動を持って、思うままに食い散らして殺していく。









「これはこちら側の圧倒的だな。やはり、報告通りに聖騎士と竜騎士はクソ野郎の能力を受けているところか」

「はい。戦局が動くとすれば――――今、来ましたね」




 王城前から聖騎士が二千人、竜騎士が五百人も並んで現れた。これから戦争に赴くような遅いスタートであった――――






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