表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/65

第62話 そしてプロローグに

 來楓(らいふ)は、胸一杯に空気を吸い込むと、あらん限りの大声で号令を発した。


「ゴブリン隊、突撃ーッ!」


 そう命じられたゴブリンたちは拳を突き上げて雄叫びを上げると、堰が切られたように一斉に突撃を開始した。


「エルフ隊は後方で待機ッ! ハーピー隊は上空へ上昇ッ!」


 続く來楓の指示で、エルフたちは気をつけの姿勢でその場に留まり、ハーピーたちは羽を地面に叩きつけるようにして羽ばたくと、打ち上がるように上空へと舞い上がった。


「ゴブリン隊、(くわ)を構えてッ!」


 この号令でゴブリンたちは手にした(くわ)を大上段に構えた。


 ゴブリンたちの体勢が整うと、來楓は上空のハーピーたちを仰いだ。

 空は晴れ渡り、燦々と降り注ぐ陽光が眩しく、小手をかざして目を細めなければ、上空に突き刺さるように上昇するハーピーたちを目で追うことはできなかった。


 やがてハーピーたちが予定していた中空に達し、旋回して待機し始めたのを確認すると───。


「……───よしッ! 今だッ! ゴブリン隊ッ! 校庭(グラウンド)を耕やしてーッ!」と、來楓はゴブリンたちに命令を下した。


 その命令を合図にゴブリンたちは一斉に(くわ)を振り下ろすと、怒涛の勢いで校庭(グラウンド)を耕し始めた。


「すごいすごいッ! いいよッ! その調子でお願いねッ!」


 來楓は、校庭(グラウンド)がみるみる耕されていく様に歓喜した。


「では次ッ! エルフ隊ッ! ゴブリン隊に続いてくださーいッ!」


 來楓が手を振って合図を送ると、気をつけの姿勢のまま微動だにしなかったエルフたちが一糸乱れぬ歩調で前進を開始した。


「種まきを開始ッ! 等間隔に種を撒きつつそのまま前進してくださーいッ!」


 來楓にそう命じられたエルフたちは手にした袋から種を取り出すと、一定の間隔で播種(はしゅ)をしつつ、精密機械のような集団行動で校庭を行進した。


「よーしッ! それじゃあ、続いてハーピー隊ッ! 肥料の散布開始よッ! 味方にかからないように注意してねッ!」


 上空で待機していたハーピーたちは「ピーッ!」と鳴き声をあげて応えると、広げた翼を畳み、急降下を開始した。そして地面に激突する寸前に大きな翼を広げると、地表すれすれを超低空飛行で滑空し、手にした袋から流すように肥料を散布すると、瞬く間に校庭(グラウンド)全体に栄養を行き渡らせた。


「すごいすごいッ! 完璧よッ!」


 來楓は満足げに歯を見せて笑うと、精霊水馬(ケルピー)に跨った。


「仕上げは水まきよッ! 精霊水馬(ケルピー)! お願いねッ!」


 精霊水馬(ケルピー)は後ろ脚で立ち上がっていななくと、たてがみを振って水を撒き散らしつつ、耕されたばかりの畑を所狭しと疾走した。


 こうして校庭(グラウンド)は、よく土が耕され、等間隔にタネが撒かれ、栄養豊富な肥料が(くま)なく行き渡り、潤いも十分な豊かな畑に様変わりした。


「大成功ーッ! 皆、ありがとうーッ! これで夏には甘~いトウモロコシが食べ放題よーッ!」


 來楓がそう言って(ろう)(ねぎら)うと、ゴブリン、エルフ、ハーピーたちは飛び上がって歓喜し、抱き合って大仕事を成功させた喜びを分かち合った。


 來楓はその光景を目を細めて眺めた。


 そしてついにトウモロコシが収穫され、來楓は元の世界の作物四品でお弁当を作ることに成功した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いいですね、このシーン✨ 來楓ちゃんが生き生きとしていてみんな一緒に……! 気になって00話を確認しました。 ケルピーに跨ってって最初から書いてあるではないですか(驚き) これには全く気づきませんで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ