第49話 王都に到着
「ほほう~。あれが王都か。さすがに立派じゃのう」
久造は馬車から身を乗り出し、小手をかざして遠くに見える王都に目を凝らした。
「本当ですね。凄いです。あんなに高くて立派な城壁が何重にも張り巡らされて、高い塔もいっぱいですね」
來楓は欧州の歴史ある城塞都市のような王都の姿に息をのんだ。
王都の背後は海に面していて、來楓は異世界で初めて見る海にも目を奪われた。
海は透き通るようなエメラルドグリーンで、旅行雑誌のパンフレットなどでよく見る高級リゾート地のプライベートビーチさながらだった。
そして海上には大きな帆船が幾隻も行き交い、船着き場には何隻もの船が停泊して、たくさんの積み荷を盛んに上げ下げしていた。
來楓はその賑わいを見て、数日かけて王都観光を楽しみたいと思ったが、ぐっと我慢して宿を確保すると、休憩もそこそこに当初の目的の通り、市場に出向いてニングが教えてくれたお弁当屋を探した。
王都の市場はさすが王都だけあって、これまでの村の市場とは規模が桁違いだった。
來楓はこの賑わいの中からお弁当屋をみつけることができるか心配になったが、その心配は杞憂だった。
目指すべきお弁当屋はすぐに見つかった。
ニングもすぐにわかるといっていたが、その通りだった。
市場の中ほど、中央広場の近くにお弁当屋はあったが、お弁当を買い求めるお客の行列が広場の中央にある噴水を何重にも周回していたのだ。
「す、凄い行列ですね……」
來楓はあまりの行列の長さに驚いた。
「まったくじゃ、これほどだったとはのう」
「ニュッニュゥ~」
久造もニュウも同様に驚いた。
とにかく來楓たちは行列に並んだが、お店にたどり着くまでたっぷり一時間は行列に並ぶことになった。
列が進んでようやくお弁当屋の看板が見えてくると、來楓はそのお弁当屋の屋号が気になった。
「久造さん、お弁当屋の屋号と看板ですけど『スロー弁当店 名物☆あいまい弁当 数量限定! 好評販売中!』と書かれていますね……」
「うむ。そうじゃのう。『あいまい弁当』とはどのようなお弁当なのかのう」
「ニュッニュゥ~」
「そうですね。お弁当の内容も気になりますが、あの文字は私たちと同じ文字です……」
その事を云われて久造とニュウはハッとした。
「た、確かにそうじゃなッ!」
「ニュッニュゥーッ!」
「お弁当屋の店主も異世界転生者だとニング先生がいっていました。となると、どうやらその転生者は私たちの同郷の方ということのようですね」




