第47話 連行されるエルフの里長
エルフの里に連行される道中、ニングがエルフ隊の隊長───もといブリュンヒルデに盛んに話しかけていた。
「おーい、ブリュちゃん。なぁ、無視せんといてえや。この状況で無視されたらワテ、ほんまに惨めやんか。頼むでブリュちゃん。なんか喋ってぇや」
「やめろ。ニング。子供の頃の呼び名で呼ぶな」
「なんでぇな、ブリュちゃん。ええやんか。ワテとブリュちゃんの仲やないか。子供の頃が懐かしいな~。ブリュちゃんとはこんな会話もようしたな~。
『ニンちゃん、お願い。また忍者のこと教えて。私、ニンちゃんが教えてくれる忍者が大好き』
『ブリュちゃんはほんまに忍者が好きやな~』
『だって忍術って凄いじゃない。水の上を歩いたり、壁と同化して敵をやり過ごすなんて魔法みたいだもん』
いや~。お互い可愛かったな~」
後ろ頭に手を組んで仰向けに寝転びながらニングはケタケタと笑い転げた。
「くッ……。子供の頃の無邪気な会話をいつまでも……」
ブリュンヒルデは顔を赤らめて恥ずかしさに耐えた。
「よう「忍者ごっこ」して遊んだあの頃が懐かしいわ。ワテもまだ前世の記憶が完全に戻ってませんでしたしな~。いっそ記憶が戻らん方が幸せやったかもしれんな~」
自虐的なニングをブリュンヒルデは諫めた。
「過ぎたこと、起こったことを後悔してもどうにもならない。エルフの一生は長い。その長い一生で失敗や過ちを犯さないエルフは一人もいない。そのことで自らを失ってしまってはエルフなど誰一人としていなくなってしまうだろう。だからそうならないよう、我々は償いをするのだ。失敗や過ちは償っても消えない。だが償いをすることで前を向いて歩ける。そしてそうすることで別の誰かを助け、感謝される。一つの過ちや失敗で九九の善行が生まれるのだ。そうすれば皆が幸せになる。エルフはそうやって育まれてきた。お前もそうすべきだ」
「ワテがやらかしたことを償おうと思ったら、一億も二億も善行をせんといかんでしょうな~。エルフの一生が百あっても足りまへんで」
「それなら心配ない───」
「んん? それはどないちゅーことですか?」
「お前は一人で償うのではない。私がいる。私がお前と一緒にお前の罪を償う」
「そ、それはどういう……?」
「私はこれから一生をお前と共に過ごすぞ。二人で力を合わせ、最後まで償いの人生を共に歩もう」
お世話になっております。柳アトムです。
以上で第三章は結びとさせていただきます。
ここまで私の小説を読んでいただきまして本当にありがとうございます。
ニング先生とブリュンヒルデさんの今後の生活についてはまたいつかどこかで♪




