第17話 エルフに捕まって絶体絶命!?
「……捕まってしまいましたね」
來楓はボソリと呟いた。
「捕まってしまったのう~」
久造は遠くを見つめながら煙管をふかし、プカプカと煙を浮かせた。
「ニュ、ニュゥ~……」
ニュウは來楓の膝に乗ると不安そうに來楓を見上げた。
「だから我の背に乗れといったのだ。さすればこのような屈辱を味わうこともなかっただろうに」
精霊水馬は苛立たし気に鼻を鳴らした。
「「「困ったゼ・ゾ・ワヨ。オイラ・アタイたちはどうなるんだゼ・ゾ・ワヨ」」」
ゴゼ・ブゾ・リンは牢屋の柵を恨めしそうに掴み、溜息をついた。
來楓たちは武装したエルフに連行され、地下の牢屋に閉じ込められてしまっていた。
状況は非常に良くなかったが、しかし來楓の表情に悲壮感はなく、むしろ喜ばしいといった明るささえあった。
「久造さん、気づきましたか?」
來楓にそう言われたが、久造はなんのことかわからなかった。
「んん? 來楓ちゃん、一体何がじゃ?」
「エルフたちの言葉ですッ!」
來楓は興奮気味にまくしたてた。
「エルフたちの言葉が私たちの言葉と一緒でしたッ! つまりこの里にいる異世界転移者は私たちと同じ言葉を喋る人だということですッ!」
そういえばそうじゃったと久造も目を輝かせた。
「おおッ。來楓ちゃん、よく気が付いたのう。それなら話し合いができるかもしれんのう」
「はいッ! なんとかなるかもしれませんッ!」
來楓は歯を見せて笑ったが、そんな來楓にゴブリンたちが水を差した。
「「「どうだろうな~だゼ・ゾ・ワヨ」」」
ゴブリンたちが否定的なので來楓は怪訝に思った。
「な、なによ、あんたたち。なんでそんなこと言うのよ」
せっかく希望を見出して嬉しく思っていたのに、後ろ向きなことを言われて來楓は気分を害した。
「エルフはすごく長寿なんだゼ」
「そうなんだゾ。だから時間の間隔がオイラたちと違っているゾ」
「そうワヨ。だからエルフにしたらちょっとの間だけのつもりでも、アタイたちからしたら何年もここに閉じ込められるなんてことがあるかもしれないのワヨ」
ゴブリンたちにそう言われて來楓は急に不安になった。
確かにここに閉じ込められてから、人の姿はおろか、物音や気配なども一切見聞きしなくなったのだ。
「そ、そんな……。何年もなんてそれは困るわ。久造さんどうしましょう……?」
來楓にそう言われたが久造も打つ手がなく、困ってしまった。
「そ、そうじゃの。うーむ。どうしたものか……」
だか來楓と久造の不安は杞憂だった。
そうして二人が頭を悩ませていると、にわかに牢屋の入り口が騒がしくなったのだ。
「ほんまでっかッ!? ほんまにワテ以外の異世界転移者が来たんでっかッ!?」
先ほど、來楓たちを捕らえた武装したエルフが地下牢に降りてきたが、その後ろに別の誰かがいるようだった。
そしてその誰かはとても興奮しているようだった。
「手荒なマネはしてまへんやろなッ!?」
そう詰め寄られると、武装したエルフたちは「もちろんだ。異世界転移者を名乗る者が現れたら丁重にお迎えせよとのことだったので、言われた通り丁重に牢屋に閉じ込めた。ここなら守りも固く安全だ」との返事だった。
來楓は丁重な扱いが牢屋に閉じ込めることという点に違和感を覚えたが、確かに危害は加えられていないので、それはそうかもしれないと納得した。
武装したエルフたちを掻き分けて一人の男が來楓たちの前に姿をあらわした。
「やあやあ、皆さん、すんまへんですなぁ。びっくりしはったやろ。驚かせてしもうてカンニンです。ワテはエルフの里でお世話になっている異世界転移者の───「うそーッ!? ニング・D・ガー先生じゃないですかッ!?」
男が挨拶をして名乗ろうとしたその瞬間、相手の言葉を遮って來楓が叫んだ。
「……へッ? あ、いや、そうでんがな。ワテはニング・D・ガーと申しますが、どうしてワテをご存じで?」
男は鳩が豆鉄砲を食らったように目を丸くして驚いた。
「ニング先生ッ! 私ですッ! 來楓ですッ! 園芸部部長の須藤 來楓ですッ!」
「……へっ? 園芸部の須藤さん……?
な、なんやてッ!? うわッほんまやッ!! あんたさんは來楓さんやおまへんかーッ!!」
ニング先生と呼ばれた異世界転移者と來楓はお互いに勢いよく駆け寄り、牢屋の柵越しに抱き合うと、邂逅を喜び合った。
伏線回収その壱! ニング・D・ガー先生でした~!(祝
ちゃんと伏線を回収できて良かったです(笑
皆さまにもお喜びいただけたのなら幸甚と存じます。
( ᵕᴗᵕ )
この後も、皆さまのご期待にそえるよう頑張ります!
୧(˃◡˂)୨




