第15話 ゴブリンたちの秘密
「と、ところでなんだけど……ッ!」
ぜひぃぜひぃと激しく息切れしながらも來楓はゴブリンたちに「精霊水馬は私の持っていたペットボトルの水を飲んだら言葉がわかるようになったじゃない。あんたたちもペットボトルの水を飲んだり、非常食を食べたりしたわよね? あんたたちは言葉がわかるようにならなかったの?」と疑問に思ったことを訊いてみた。
すると三匹のゴブリンの動きが瞬間的にピタリと止まった。
その様子を見て來楓は「え……ッ? ま、まさか……ッ?」と思ったが、そのまさかだった。
「わかるゼ」
「わかるゾ」
「わかるワヨ」
「ええええ~っ!!」
「なんじゃとっ!?」
「ニュニュニュ~!?」
これには來楓はもちろん久造もニュウも驚いたようだった。
「な、なんでわかるって言わなかったのッ!?」
そう言われると三匹のゴブリンは顔を見合わせて「聞かれなかったからだゼ」「聞かれなかったからだゾ」「聞かれなかったからワヨ」と悪びれた様子もなく答えた。
「じゃ、じゃあ、いつからわかっていたの?」
「「「最初にお弁当を奪って食べたときからだゼ・ゾ・ワヨ」」」
來楓は全身の力が抜けてがっくりとうなだれた。
「最初からわかっていたんじゃない……」
「「「オイラ・アタイたちも急に言葉がわかるようになって驚いたゼ・ゾ・ワヨ」」」
ゴブリンたちは本当に驚いたんだと言わんばかりの表情だったが、その様子が被害者ぶっていたので、來楓は「自分たちが私のお弁当を奪ったからじゃない」と内心思った。
「あ、あとさ───……」
さらに來楓はもう一点、気づいたことをゴブリンの一匹に対して述べた。
「あなたは女の子だったのね」
そう言われたゴブリンは表情を変えることなく小首をかしげた。
言われている言葉の意味がわからなくて「?」という感じだったが、一呼吸置いて意味を理解すると、みるみる顔が真っ赤になった。
そして拳を振り上げて怒りをあらわにすると「ナニ言ってるのワヨ! 一目瞭然でしょワヨ! アタイはこの二人のマドンナ的存在なのワヨ! ヲタサーの姫ポジなのワヨ! そんなことも見てわからないのワヨ!」と來楓をポカポカと叩いた。
猛烈に責めたてられたが、來楓は「いや、わかんないって……」と理不尽に思った。
だが言われてみれば、このゴブリンだけは腰巻が他の二匹と違って、ワンショルダーだがワンピースタイプだったのだが、学校にゴブリンが一族総出でやってきた際、お母さんゴブリンの皆さんは腰巻がワンピースタイプだったなと思った。
* * *
「ところであんたたち、名前はなんていうの?」
言葉が通じることがわかったので來楓は尋ねてみた。
「オイラたちの名前はお前たちの言葉では発音できないゼ」
「そうだな、無理だゾ」
「うまく言葉にできないわねワヨ」
その返答に來楓は腕を組んで唸った。
言葉が通じるとわかってから、三匹のことを「あんたたち」とひとまとめにすることに抵抗を感じるようになったのだ。
「それじゃあ、私があんたたちの呼び名を決めてもいい?」
そう言われると三匹は顔を見合わせたが、すぐに「うんうん」と嬉しそうに頷いた。
自分たちにどんな呼び名がつけられるのかとても楽しみといった様子だった。
「それじゃあ、ゴゼ、ブゾ、リンでどう?」
來楓はひとりひとり指差して呼び名を命名した。
三匹はまたも顔を見合わせ「ゴゼ……」「ブゾ……」「リン……」と來楓が考えた呼び名を口にした。
その様子が無表情だったので、來楓は「あまりにも安直過ぎたかな……」と不安になったが、次の瞬間、ゴブリンたちが「オレはゴゼだゼ!」「オレはブゾだゾ!」「アタイはリンよワヨ!」と飛び上がって大喜びしたのでほっと胸を撫でおろした。
こうして來楓は異世界転移者のいるエルフの里に着く直前で、ゴブリンたちと会話が可能であることがわかり、また呼び名もつけることができた。
お世話になっております。柳アトムです。
( ᵕᴗᵕ )
なんとゴブリンたちは言葉を理解していました(笑
しかし來楓のネーミングセンスはメチャクチャですね(汗
いや、これは來楓ではなく作者が悪いのですが……(反省
素敵なネーミングセンスを身につけたいです(切実
皆さま、ここまで拙作を読んでいただきまして本当にありがとうございます。




