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第09話 ゴブリン大襲来!?

 今朝も來楓(らいふ)は保健室のベッドで、朝日によって目を覚ました。


「今日もいい天気ね」


 來楓は窓辺に向かうとボン太郎の様子をうかがった。


「おはよう。ボン太郎。今朝の調子はどう?」


 そう言いつつ來楓はボン太郎の根元に少し水を差した。


 來楓には少し気掛かりがあった───。


 それはボン太郎が少し弱ってきていることだった。

 実はボン太郎は異世界に転移した際の騒動で植木鉢が割れてしまい、土がこぼれてしまったのだ。

 現在は植木鉢を紐で縛って固定し、土を寄せてあったが、ボン太郎の根っこの土が一度崩れてしまったからか、ボン太郎の枝葉が少し萎れてしまっていたのだ。


「このまま枯れたりはしないと思うけど、根が土に馴染むまでもうちょっとかかりそうね」


 來楓は(いたわ)るようにボン太郎の幹をさすった。


「お~い。來楓ちゃん。起きたか~?」


 校庭(グラウンド)から來楓を呼んだのは久造(きゅうぞう)だった。

 來楓は窓を開けて久造に答えた。


「は~い。久造さん、おはようございます。起きていますよ~」


「お~。それならすぐにこっちに来ておくれ~。大変なことになったんじゃ~」


 久造の声に危機感はなかったが「大変なこと」と言われたので來楓は心配になった。

 すぐにいきますと返事をすると、來楓は大急ぎで校庭に向かった。


「どうしたんですか、久造さん。大変なことって何かあったんですか───」


 來楓は校庭に出て、何があったのか久造に訊こうと思ったが、校庭に広がっている光景を見て久造に訊くまでもなく大変な事態を理解した。


 ゴブリンたちが大挙して押しかけてきていたのだ。


「ええッ!? 久造さん、このゴブリンたちはいったい!?」


 柵の向こう側には五十匹近いゴブリンが押し寄せていた。

 來楓は一瞬、ゴブリンたちが大軍を率いて攻めてきたのかと思ったが、どうやらそうではなかったようだ。


「話を聞くと、ゴブリンたちはエルフに縄張りを奪われ、住む場所を追われてしまっているそうじゃ。着の身着のまま放浪していたのじゃが、いよいよ困り果て、我々を頼ってやって来たらしいのじゃ」


 そう言われて來楓は改めてゴブリンたちを見てみると、確かに老若男女、一族総出といった感じで、小さい子供や赤ん坊を抱いたお母さんゴブリンも何人もいた。


「ど、どうしましょう、久造さん……」


「う、うーむ……。ゴブリンたちは身を寄せさせてくれたら農作業を手伝うと言っておる。じゃがしかしな~……」


 久造も困り果てている様子だった。


 來楓もお引き取り願いたい気持ちでいっぱいだったが、ゴブリンたちは長らく放浪していたようで疲れが色濃くあらわれていた。

 子供や赤ちゃんも元気がなく、お母さんゴブリンも目から精気が失われていた。


 來楓は決心した。


「わかりました。ゴブリンたちを受け入れましょう」


「ら、來楓ちゃん、それで良いのか?」


 來楓は覚悟を決めてゆっくり深く頷いた。


「困っている相手を無下にはできません。非常食は数に限りがあるのでタダで配ることはできませんが、農作業を手伝ってくれるというならジャガマイモの収穫が期待できます。その見返りに少しは分けてあげることができるかもしれません」


 來楓の正義感と心優しさに胸を打たれ、久造はそれ以上、異論を唱えなかった。

 何より久造も困っているゴブリンたちをなんとかしてやりたいという思いがあり、來楓がそう決断してくれて嬉しく思う部分もあった。


「うむ。わかった。そうしよう」


 久造が柵の扉を開くと、ゴブリンたちはゾロゾロと学校に入ってきた。

 その中には來楓が最初に出会った三匹のゴブリンたちもいた。


「このゴブリンたちはあんたたちの家族や仲間たちなのね。あんたたち、仲間思いなのね。えらいじゃない。見直したわ」


 來楓の言葉はニュウが通訳をしてくれた。

 三匹のゴブリンは少し照れた様子だったが、胸を張って自分たちを誇った。


「それじゃあ、あんたたち。ゴブリンのみんなを二階の二年生の教室に案内するから、そこを自分たちの部屋として自由に使うように伝えて。部屋割りをどうするかはあんたたちに任せるわ」


 來楓は三匹のゴブリンに一任した。


 その日のうちにゴブリンたちは二階の教室に数組に分かれて入り、荷物を置いて寝床を作り、新たな生活拠点として定着した。


 その日は必要最低限だが非常食をゴブリンたちに分けてやった。

 どのゴブリンも感謝し、來楓や久造、それにニュウに深々とひれ伏して敬意をあらわし、非常食を受け取っていった。


「急に学校が騒がしくなりましたね」


 來楓は新たな入居者で賑わう学校を見てつくづくといった様子で思った。


「そうじゃな。これまでワシらだけで静かじゃっただけに、余計に騒がしく思えるの」


 しかし久造は学校が賑やかになったことを嬉しく思っているようだった。


「若いオスのゴブリンが明日から農作業を手伝ってくれるそうじゃ。これで一気に校庭の畑が増えそうじゃのう」


「そうですね……」


 そう相槌を打ちつつ、來楓はその通りに上手く行くかどうか一抹の不安を覚えた。


「ニュゥ~」


 そんな來楓の不安を察し、ニュウが膝の上に乗ると來楓を優しく撫でるように頬ずりをしてくれた。


「大丈夫じゃ、來楓ちゃん。ワシも老骨に鞭打って手伝うからの」


 久造も力こぶを作って見せて來楓を励ました。


「久造さん、ニュウ、ありがとうございます」


 來楓は二人に励まされ、自分もしっかりしなくてはと気を引き締めた。


 二階の教室はゴブリンたちが入居しましたが、まだ三階の教室と、そして屋上が空室です♪

 (さらにもう一ヵ所「意外な空室」もありますが(笑))

 さてさて空室に誰が入居するのかお楽しみにしていただけますと幸いです。

 ご期待にそえるよう頑張りま~す!

 ୧(˃◡˂)୨

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― 新着の感想 ―
ゴブリン、最初は怖かったけど可愛いく見えてきました。仲間思いでみんなでやってきて農作業が捗りそうです(^^) 空からの肥料、他にも來楓ちゃんがどのように生活していくのか楽しみです。 ポン太郎お久しぶり…
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