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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第六章 夏大に向けて
73/181

72th BASE

お読みいただきありがとうございます。


プロ野球もポストシーズンが始まりましたね。

今年はどこが日本一になるのでしょか?


 試合は四回表に入る。亀ヶ崎はこの回一点を加え、尚もランナー二、三塁で紗愛蘭の二打席目を迎える。


(さっきは失投をしっかり打てた。でもここは得点圏にランナーもいるし、簡単に甘い球は来ない。狙い球を絞って、少しでも打ちやすいところに入ってきたら一発で仕留める)


 相手投手は市川のまま。一球目、彼女は外角へのスライダーを投じる。ボールゾーンから中に切れ込み、際どいコースに決まる。ストライクではあるが、これは流石に紗愛蘭も打てそうにない。


(ただ初球にあれだけの良い球だと、却ってその後はストライクゾーンに投げにくくなるもの。きっとチャンスは来る)


 紗愛蘭の読みは当たる。二球目、三球目と連続して外れ、ツーボールワンストライクとなる。ヒッティングカウントだ。


(前のは二球ともストレートだった。もしもバッテリーが歩かしもありと考えてるなら、ここは変化球の可能性が高い。一球目のこともあるし、スライダーにヤマを張ろう)


 四球目。そのスライダーが来た。内角に曲がってくるところを、紗愛蘭は腕を畳んで打ち返す。打球は一塁手の頭上を越え、ライト線を沿うようにして飛んでいく。


「切れるな!」


 ボールが弾む。一塁塁審はフェアのジェスチャーを示した。二人のランナーが相次いでホームベースを踏み、二点が加算される。打った紗愛蘭も二塁まで達する。


「おお、ナイバッチ! 凄い凄い!」


 真裕がベンチの前から、紗愛蘭に向かって拍手を送る。紗愛蘭もそれに応答し、二塁ベース上で控えめに右手の拳を握る。ヘルメットから僅かに出ている襟足が、心なしか愉快気に(なび)いていた。


 このタイムリーで亀ヶ崎はリードを四点に広げた。ところがその裏、ピンチが訪れる。教知大に二点を返され、更にツーアウトランナー三塁とされる。真裕にとっては踏ん張りどころを迎える。


「よろしくお願いします」


 バッターは先ほどの試合に代打で出場した本居。ストライク、ボール、ファールと続き、真裕は三球で追い込む。


(二点取られてるし、ここは何としても乗り切りたい。せっかくだから藤原さんに教えてもらったこと、実践してみようかな)


 四球目のサインはストレート。真裕はセットポジションに入ると、臍の前にグラブを置いてじっと止まる。いつもならすぐにモーションに入るが、この一球は中々投げようとしない。


(あれ、投げないの?)


 本居は戸惑うと共に、小焦れったさを感じる。不意に彼女は構えたバットを肩に下ろそうとした。


(……あ、チャンスかも)


 その隙に真裕が投球を始める。本居は慌てて体勢を整えようとする。


「うわ、まじか」


 本居は完全にタイミングを狂わされてしまった。外角ベルト付近の決して厳しいコースではなかったが、彼女は自分のスイングができず、力無いフライを打ち上げる。


「ライト!」

「オーライ」


 この打球を紗愛蘭が余裕を持ってキャッチする。これでスリーアウトとなった。


「ふう……。よし」


 一つ息を吐き、真裕は額に汗を光らせながらマウンドを降りていく。本居の打ち気を逸らすことに成功し、首尾よくピンチを切り抜けられた。


(バッターの動きもあからさまだったけど、上手くいって良かった。ただこれをやるには結構集中力がいるなあ……。こっから訓練しないといけないよ)


 真裕は次の回も続投し、予定されていた五イニングを投げ切る。結局四回裏の二失点以外は点を与えなかった。


「お疲れ。ナイスピッチング」

「ありがと。紗愛蘭ちゃんたちが点取ってくれたから楽に投げられたよ。次の打席も打ってね」

「えへへ。できる限り頑張るよ」


 首にタオルを巻いてベンチに腰を下ろす真裕を、紗愛蘭が労う。真裕はここで降板。先発投手としての役割をきっちりと果たしたのであった。


 六回は両チーム無得点で進み、最終回となる。七回表、亀ヶ崎の攻撃はあっさりとツーアウトを取られながらも、そこから連続四球でチャンスを作る。この場面で紗愛蘭の三打席目が巡ってきた。


「お願いします」


 球審に一礼して打席に入り、紗愛蘭はベンチのサインを覗う。だがここはツーアウトなので自由に打つしかない。隆浯も握った手を突き出し、「行け」というジェスチャーをするのみだ。

 点差は二点。亀ヶ崎は裏の教知大の攻撃を抑えれば勝てるが、ワンチャンスでひっくり返される可能性は十分にある。試合展開を考えても、ここで追加点を取る意味は大きい。紗愛蘭にも自然と気合が入る。


(残りワンナウトだし、ピッチャーも全力で抑えに来るはず。けどこっちだって点が欲しい。追加点を入れて、真裕を勝ち投手にしてあげたい)


 マウンドには二番手の中津(なかつ)が登っていた。サイドハンドから投げこんでくるサウスポーで、左バッターの紗愛蘭にとっては一番打ちにいくタイプの投手だ。


 初球、中津がアウトコースにストレートを投じる。紗愛蘭はボールと判断して見送る。


「ストライク」

「え?」


 思わず紗愛蘭は声を漏らす。これが、左打者が左の横手投げと対戦する際に厄介な点である。単なるストレートでも体から逃げていくような軌道で進むため、通常よりもボールが遠くに感じられてしまう。一線級の選手でさえ、これを一打席で攻略するのは難度が高い。加えて紗愛蘭はソフトボール上がり。こうした投手を打つ経験はまず無かった。


 二球目。一転して紗愛蘭の体に当たりそうな勢いで投球が来る。紗愛蘭は咄嗟に腰を引くが、ボールはベース側に潜り込むようにして入っていく。これもストライクとなる。


(今のも真っ直ぐ? 当たるかと思った) 


 紗愛蘭は為す術なく追い込まれた。一度打席を外し、二度三度素振りをする。そんな彼女の姿を、ベンチの洋子は口を真一文字に結んで見つめる。


(ここまでのあの子は、二打席連続でツーベースを打ってる。正直こんなにできるとは思ってなかった。でも左対左で打てないのなら、まだまだ私にも希望はある)


 三球目、再び中津はアウトコース低めに直球を投げる。


「ボール」


 ここは紗愛蘭も冷静に見極める。だが今ので次の配球が読み辛くなった。


(外角を続けるのか、内角にズバッと決めにくるか……。どっちもあり得るカウントだ。けど今の私じゃ、どっちも追うことは到底無理。だったらうだうだしててもどうにもならない。一か八か、外角に的を絞る)


 マウンドの中津が首を縦に動かす。サインが決まったみたいだ。紗愛蘭は少しだけ左足を後方に引いた。


 これが勝負の一球。中津はセットポジションに入って一間を作ってから、紗愛蘭に対しての四球目を投げた。



See you next base……


WORDFILE.32:投法


 投手の投法は主に、ボールをリリースする時の位置によって四つの種類がある。真上から投げるオーバースロー、そこから約四五度下ろしたスリークオーター、真横から投げるサイドスロー、体を沈ませて下から投げるアンダースローとそれぞれ名付けられている。どこからがその投法に入るかという明確な境界線はない。

 全体の割合で考えるとオーバースローとスリークオーターがほとんどを占め、現状、アンダースローはかなり稀少な存在となっている。因みにドラらんはサイドスロー。

 投法によって様々な特徴があるが、それはまたいずれ……。


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