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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第四章 ルーキーズ!
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46th BASE


最近はQuizKnockさんの動画を見るのにハマってます。

伊沢さんを初めメンバーの皆さんの知識の量にも驚かされますが、それを活かした物事の考え方は非常に感心させられますね。

自分も参考にしていきたいなあ……。

「ナイスラン。惜しかったね」

「うーん、もっと良いスタートが切れればセーフになったかもしれないんだけど」


 ネクストバッターズサークルに座っていた真裕は、帰ってきた紗愛蘭と一言交わす。紗愛蘭は太腿裏についた土を掃いながら、口惜しそうに首を傾げた。


「紗愛蘭、このままライトに入れるからな」

「はい」


 隆浯からの指示を受け、紗愛蘭はグラブを用意する。その後バッターの優築がサードフライに倒れてスリーアウトとなり、彼女はライトの守備位置へと向かう。


《亀ヶ崎高校、代走致しました踽々莉さんが、そのままライトに入ります》


「踽々莉さん、行くわよ」

「あ、はい」


 センターの晴香とイニング間のキャッチボールをする紗愛蘭。ランナーからの出場だったため少なからず緊張感は和らいでいたものの、体の動き自体はまだぎこちない。


「緊張してる?」

「ま、まあ……」

「ふふっ。そりゃそうよね。失敗しても良いから、声だけは出していきましょ。私もできるだけカバーするわ」

「ありがとうございます」

「ボールバック!」


 紗愛蘭はボールをベンチに返す。六回表が始まった。


《一番セカンド、円川さん》


 楽師館の打順は三巡目を迎える。万里香の二打席目の結果はファーストゴロ。ここまでは真裕が抑え込んでいる。万里香としては、そろそろ一本出したいところだ。


(攻撃もあと二イニング。この回で点を取らないとまずいよね。絶対に塁に出ないと)


 初球、真裕は真ん中低めにツーシームを投じる。万里香は微かに反応するもバットを引く。判定はストライクだ。


(これが邪魔なんだよなあ。前の打席で引っ掛けたのが頭に残っちゃってるよ)


 万里香は一度バッターボックスを離れ、バットで右肩を軽く叩く。三打席目であるが、未だにタイミングを掴み切れていない。目の前で悩む万里香の姿を、優築はじっくりと観察する。


(ここまでの真裕は予想以上に上手くいってる。球威も衰えていないし、この上位打順を三人で終わらせて、流れを引き寄せたい) 


 二球目はアウトコースへのストレート。万里香はバットに当てたが、打球は一塁側のファールゾーンに飛んでいく。


 三球目。低めのカーブが外れる。カウントはワンボールツーストライクとなった。


(多分向こうは持ち球を全部使ってきてる。これじゃ、後の組み立てが予想しにくい)

(見送られたけど投げてる感触は悪くない。抜け球だけに気を付けて、次で決める)


 真裕がサインに頷く。力感無く振りかぶってから、万里香に四球目を投じる。

 球種は二球続けてのカーブ。外角のストライクからボールになる絶妙のコースへと投げ込んだ。万里香はバットを投げ出すような形でのスイングをさせられる。


「くわっ……」


 辛くもバットの先にボールは当たった。ライトの紗愛蘭の前に飛球が行く。


「ライト!」

「オ、オーライ」 


 紗愛蘭の走り出しが一拍遅れた。落下点まで真っ直ぐ前進するも、ボールは勢いを失い、彼女の一歩手前に落ちる。


「あ……」

「お、ラッキー」


 万里香は一塁ベースを回ったところで止まる。完全に打ち取っていたが、不運にもヒットになってしまった。


「紗愛蘭、早く返して」

「は、はい」


 紗愛蘭は素早くボールをセカンドの光毅に投げる。


「おっけ。ナイライト」

「はい……」


 守備位置へと戻る紗愛蘭。無難に打球を処理したように見えるが、彼女の表情には険しさが滲んでいる。


(一歩目、全然遅かった。普通にキャッチできる打球だったのに)


 決して準備を怠っていたわけではない。それでも思うように足が動かず、できるはずのプレーができなかった。紗愛蘭はそれが悔しかった。

 ワンナウトランナー無しとノーアウトランナー一塁では天と地の差がある。加えて終盤の緊迫した展開の中では、このワンプレーの与える影響がとてつもなく大きいことは言うまでもない。


 続く二番の錦野は一球で送りバントを決める。楽師館の攻撃にリズムが出てきた。亀ヶ崎は堪らず守りのタイムを取り、内野陣をマウンドへと集める。


「ま、まずはやるべきことを確認しよう。ワンナウトランナー二塁、打順はクリーンナップ。やや後ろ目に守って、一つずつアウトを取る。そうすれば点は入らないから。もしもヒットが出たら外野のバックホームに備える。自分が誰のカットマンに入って、どこのカバーに向かうかは理解できてる?」


 風が指揮を執って状況を整理する。その姿を、万里香は二塁ベース上から憧憬(しょうけい)の眼差しで見つめていた。


(風さん、かっこいいなあ。私もあんな風になりたい。……風さんだけに)


 万里香のダジャレのセンスはさておき、今の亀ヶ崎において、風がチームを支える中心の一人であることは間違いない。こうした一つのプレーが試合の勝敗を決する場面で、もったいないミスを防ぐために内野陣の意識を統一することが、彼女に課せられた大切な役割。隆浯や他のチームメイトから高い信頼を得ているという証でもある。そんな風は万里香にとって、いつの日か追いつきたいと願う目標の選手だ。


「さあ皆、ここは必ず守りきろう!」

「おう!」


 マウンドの輪が解け、風がショートの位置へと戻る。そこで万里香が一声掛けた。


「やっぱり風さん、流石っすね。憧れちゃいます」

「え? どうしたの急に?」


 眉間に皺を寄せる風の顔を見て、万里香は悪戯っぽく笑う。


「素直な気持ちですよ。でも風さん、前に比べて少し口下手になりましたね」

「うう……。それは言わないで」


 会話の中身は非常に微笑ましい。だが一度プレイが掛かれば、真剣勝負の世界に入らなくてはならない。万里香と風、それぞれの表情が一気に引き締まる。試合の大きな山場がやってきた。



See you next base……


WORDFILE.18:ベースコーチ

 

 一塁側と三塁側それぞれのコーチャーズボックスから、打者や走者に指示を送る人。ランナーコーチとも呼ばれる。自チームの攻撃の際には、ユニフォームを着たチームの一員を必ず配置しなければならない。走者の進塁・帰塁の判断やボールの所在の伝達が主な役割で、特に三塁コーチは直接得点に関わることが多いため非常に重要な存在である。

 プロチームは原則として誰が務めるかは指定した二人に限られるが、アマチュアの場合は特定する必要はない。そのため高校野球などでベースコーチをしていたものが代打や代走で出場することも珍しくない。

 因みにドラらんは現役時代、名ベースコーチとして名を馳せたこともあった(……気がする)。


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