第七十七話 ギルドへの報告
街に入り、ギルドを目指すと……ギルドの前には、何人かの見知った顔がいた。
俺が来るより前に素体と交戦していた冒険者パーティーとローゼンだ。
「お、おい、あれ!」
その中でまず最初に俺に気づいたのは、例のパーティーの大剣使い。
「「「「た、助かった〜」」」」
緊張した面持ちから一点、彼らの表情は一瞬パッと明るくなったあと、気の抜けたようなものへと変わった。
「あれ、わざわざ外で帰りを待っていたんですか?」
「待っていたも何も、一部始終を見ていたぞ。まあこの距離から見えるのなんて大爆発くらいだが。戦いが終わった後は、ずっと心配で帰りを待ってたんだ」
どうやら彼らは戦いをずっと注視していたようだ。
……ん? 戦いが終わってから、心配で帰りを待ってた?
「なんで戦いが終わった後も心配してたんですか……」
「そりゃどっちが勝ったかなんて分からないからな。分かるのは『大きな気配のうち一つが消えた』までだから、どっちが勝ったのかずっと心配してたんだよ」
「え……もしかして、俺とドラゴンの気配、どっちがどっちか分からないんですか……」
「普通の対ドラゴン戦なら、ひときわでっかい気配が消えれば冒険者が勝ったって分かるんだがな。ジェイドが本気出してる時の気配はデカすぎてドラゴンのと見分けがつかなかったんだよ」
……そんなことってあるのか。
流石に「国士無双」発動中でも、素体と張るほど気配がデカくなるってことはないと思うんだがな……。
「絶・国士無双」のほうで戦っておけば、余計な心配をかけることも無かったのかもしれないが。
まあそんな配慮のために効果時間を減らしてる余裕なんてなかったので、仕方のないことだな。
「しかし……ジェイド、何故今ここにいる? 件の調査の途中のはずじゃ……」
「端的に言えば、その調査の途中でさっきのドラゴンの出現が分かったからです」
「そ、そうか。それに関わってくるならここで話は聞けないな……。時間が大丈夫なら奥で話してくれ」
「大丈夫ですよ」
ということで、俺はローゼンに連れられ、例のギルドの個室で途中報告を行うこととなった。
◇
個室に入ると、ローゼンはまずこう聞いてきた。
「いろいろと聞きたいことはあるが……そうだな。まだ調査任務の途中のはずだし、端的にこれだけ聞こう。あのドラゴンと『永久不滅の高収入』の繋がりは一体なんなんだ?」
その質問に対し、俺は関係のありそうな部分だけをピックアップし、報告していった。
「永久不滅の高収入」が最終破壊生物を作ろうとしていたこと。
幻諜のメンバーのうち三人が、一人の裏切りにより生贄にされそうになっていたが、それはどうにか阻止できたこと。
最終破壊生物の人工心臓「トライコア」は、基地捜索中に回収できたこと。
そしてそれをきっかけに、自暴自棄になった構成員の一人が素体を解放し、最終破壊生物のなりそこないが出現してしまったこと。
そのなりそこないこそがさっきのドラゴンであり、既に討伐に成功していること。
「な、なるほどな……」
一連の話しを聞くと、ローゼンは頭を抱えつつそう呟く。
「あのドラゴンが、そんな計画の産物だったとは……。そりゃドラゴンスレイヤーの皆を以てしても、全く歯が立たないわけだ」
……さっきのパーティーの名前、ドラゴンスレイヤーっていうのか。
なんというか、随分と直接的なネーミングだな……。
「とりあえず……さっきの戦いで、完全に決着はついたってことでいいんだよな? アレすらもまだ何かの前兆である、とかじゃなく」
「そこは大丈夫です」
ローゼンが一番懸念していたであろうポイントに、俺ははっきりと答えた。
少なくとも最終破壊生物関連に関しては、これで敵の計画は完全に頓挫したからな。
「ありがとう。とりあえず知っておきたいことは把握できたよ。心置きなく、調査に戻ってくれ」
話し終えると、俺は個室から解放してもらえることになった。
「ただ……これは個人的な興味なんだが、最後に一つだけいいか」
「なんでしょう?」
「ドラゴンスレイヤー曰く……お前、『かなりの余波が出る特殊な兵器』とやらを使ったんだよな。あれって、あの二回目の天変地異みたいな大爆発の時のことだと思うんだが……いったいどうやって、ドラゴンだけを爆発地点に誘導したんだ?」
「え、普通に真下からその兵器で撃っただけですけど」
「自分もノーガードかよ!? 一体どんな頑丈さなんだお前……」
別にメチャクチャタフとかそういうアレではないのだが……。
まあいい。下手したらメギルたちが先に報告から帰還してるかもしれないし、さっさと戻るとするか。




