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第四十八話 想定外のランクアップ

 個室で待っていると、ギルドに地雷を提出した時に出てきたのと同じ男の人が入ってきた。

 まず男は、テーブルの上に袋を置きつつこう言った。


「俺がこのギルドの支部長、ローゼンだ。そういえば、前会った時はあの変な地雷に気を取られて、自己紹介を忘れていたな……。まずこれは、街道安全化の報酬だ」


 支部長ローゼンはそう言って、袋を指差す。


「中身は3000万パースだ。結構な量だからな、時間とかは気にせず気の済むまで金額の確認をしてくれ」


 そういえば、確かにそんな追加報酬が出るって話だったな。

 個室で話って、そっちのことだったか。


 袋は手のひらサイズくらいで、とてもそんな大金が入っているようには見えないが……これもマジックバッグなのだろうな。

 中に手を突っ込んでみると、案の定そこは空間拡張系の付与魔法がかかっているとしか思えない広い空間となっていた。


「確認しました」


「マネーカウント」を使って、3000万パースちょうど入っているのを確認すると、俺はマジックバッグをローゼンに返した。


 しかし……冷静に考えてみると、ただ大金を渡すというだけの理由でわざわざ個室にまで呼ぶだろうか。

 マジックバッグを介するなら、そんなにドッサリと大金が渡されるさまが周囲から見えるわけでもないし、普通に窓口で良かった気もする。

 ……いやでも、ローゼンは「まずこれは」って言ってたし、まだ他に何かあるのだろうか。


 などと考えていると、ローゼンは今度はポケットから一枚のカードを取り出した。

 それを目にして……NSOでの記憶からそれが何のカードであるか分かった俺は、一瞬目を疑った。


「それって……」


「ああ。そしてこれが、ジェイドの新しい冒険者証だ。ランクはAで、一ツ星維持試験の受験資格が付与されている」


 なんと俺は、急にAランクまで昇格することとなってしまった。

 ゼインの言っていた「Cランクの二ツ星まではほぼ確実で、そしておそらく、そこに三ツ星維持の試験をいつでも受けられる権利が付く形になる」とは一体なんだったのか。


 三ツ星維持ではなく一ツ星維持なのは、まあS以上のランクが存在しないからという理由だろうが。


「あの、前の街では俺、Cランクの二ツ星あたりになるって聞いてたんですが……」


「それは護衛依頼を受ける前の街で聞いた話だろう? 護衛依頼を受けていれば、今のジェイドにAランクまで上げない理由などない」


 聞いてみると、ローゼンはそう経緯を説明した。


 ……そういえば、ゼインと最後に話した段階では、俺が護衛依頼を受けることは伝えていなかったな。

 しかしまあ、ネックになっていたのがたったのそれだけだったとは……。


「それにしても『永久不滅の高収入』、本当にとんでもない組織なんだな……。話は聞いたぞ。アレは確かに、ただの奴隷商と思っていていいものではない」


 そしてローゼンは、遠い目をしながらそんなことを呟く。


「話を聞いて、あの組織に関する情報は、国内外の全ギルドで共有していかなければと思ったよ。街道の地雷の件もそうだったが、他にも各地に、原因不明の危険地帯があったりするからな。……それらについて、『永久不滅の高収入』の仕業である可能性を踏まえて対処していくようにと伝えるつもりだ」


「それは本当によろしくお願いします」


 などと会話しつつ、俺は新たな冒険者証を受け取った。


 ……これで全部だろうか。

 と思ったが、どうやらそうではないようだった。


「そして……最後の一件。これがある意味一番重要だ」


 ローゼンはそう言って、話題を切り替える。


「今日ジェイドが発見したという、例の洞窟の新領域なんだが……そこの調査依頼を指名したいと思っている。どんな地形で、どんな魔物がどのように配置されているのか。結果次第で、どのレベルの冒険者にまで探索許可を出せるかが変わってくるからな……。強制ではないが、できれば頼みたい」


 ……やっぱりそれもあるのか。

 おそらくあの洞窟の奥地がエルシュタットで一番強い魔物の生息領域だろうし、そこを主な狩場にしたいとは思っているので、そのついでに調査をまとめるくらいであれば全然協力できるのだが……討伐のついででやっていくとそれなりに時間はかかるだろうし、急げと言われると厳しいかもしれない。


「それって期限とかありますか?」


「いや。いくらジェイドが強いとはいえ、決して無茶をさせる気はないからな。気の済むまで時間をかけてもらって大丈夫だ。ただ……『地下数十キロにも渡っていて分岐がたくさんあり、とても一人で調査しきれない』とかいう状況だったりしたら、一か月を目途に中間報告は欲しいな。その場合は、増員を検討するから」


 ……問題ないようだ。

 俺とローゼンで懸念点は若干ずれてはいるが、時間がかかっても大丈夫でさえあればそれでいい。


「では引き受けましょう」


「助かる」


 ローゼンは既に依頼書を用意して持ってきていたので、俺はそれにサインをした。

 そして、ギルドの個室を後にした。

新作「勇者パーティーを追放されたので、魔王を取り返しがつかないほど強く育ててみた」(※前回よりタイトル変更)、現在22話まで連載中で今からちょうどざまぁシーン突入ってところです!

良かったらぜひ読みに来てください!

リンク:https://book1.adouzi.eu.org/n3967gw/

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