87 逃走の巻き
大統領官邸や総理官邸で騒ぎが起こっているとは露知らず。ジャスティスと話をしていた半荘は、スマホが鳴ったのでタップして通話にする。
「忍チューバ―君、よくやったぞ!!」
電話の相手は東郷。
半荘も気付いていたので、スマホを遠くに持って行った。
「我々の悲願、竹島を取り戻してくれて、本当に有難う! 海上自衛隊一同、心より礼を言わせてもらう!!」
東郷の大声とは別に、スマホからは「よくやった」「有難う」と、多くの声が聞こえている。
艦内にいる自衛官の声だろう。
「すぐに船を回すからな!」
「おいおい。Vチューブに流れているのに、そんな事を堂々と言っていいのかよ」
ようやく声が小さくなってきたので、注意を促す半荘。
「かまわん。韓国では大統領が大変な事になっているし、艦隊も引いて行っているからな」
「大変??」
「あとで話してやる。帰りは自衛隊で送ってやるから、話す時間なんていくらでもある」
「あ~……ジャスティスの船で帰るから、迎えはいらない」
「なんだと!?」
どうやら東郷は、生忍チューバ―を見たかったらしく、なかなか引き下がらなかったが、半荘は食事の件を切り出すと、それなら個人で会えるからアリだと納得して電話を切った。
ただし、艦隊の自衛官にはかなり恨まれ、それと同時に食事会に連れて行ってくれと言う者が続出したらしい。
「ふぅ……。そろそろ乗ろっか……あれ??」
ジャスティス、東郷と話を終えた半荘が振り向くと、そこには居るはずのジヨンの姿が無かったので、キョロキョロと辺りを見回す。
「あれ~? ジヨンは何処に行った?」
「あそこデース!」
先に発見したのは船に乗るジャスティス。
基地に向かって走るジヨンを、指を差して半荘に教えてくれた。
「忘れ物? ブラザー。どうするデース?」
「ああ。すぐに追う。あと、頼みを聞いてくれるか?」
ジャスティスに頼み事をした半荘は、ジヨンを追い掛けるのであった。
* * * * * * * * *
「ハァハァハァ……」
急いで基地に走るジヨン。
それでもジヨンには使命があるからか、息を切らして走る。
「何処に行くつもりなんだ?」
基地の扉がすぐそこの所で、後ろから掛けられた声にジヨンは止まらずに頭だけ振り向くが、誰もついて来ていない。
「こっちこっち」
再度掛けられた声に先ほどまでの進行方向を向くと、基地の扉の前に仁王立ちの半荘がいた。
「ハァハァハァ……」
ジヨンは逃げ切れないと悟ると、走る事をやめ、息を整えながら半荘の質問に答える。
「何処って……独島よ」
「あ~」
ジヨンの答えに、半荘は頷く。
「驚かないのね」
「まぁ……知ってたからな」
「……いつから?」
「そりゃ最初からだ」
半荘の答えに、ジヨンの顔が険しくなる。
「だってさ~。観光客は全員集まっていたのに、一人だけ隠れてるっておかしいだろ? そいつらに残っている人はいないかと聞いたのに、誰も教えてくれなかったって事は、口止めされていたって事だ」
饒舌に語る半荘は、ジヨンの正体に言及する。
「この事から、ジヨンは韓国の秘密警察、もしくは秘密工作機関の一員である!!」
ビシッと指差す半荘は、心の中で「決まった」と呟く。
そんなドヤ顔の半荘に、ジヨンは正体を明かす。
「全然違うんだけど……」
「え……」
「ただの愛国者。しいて身分を明かすなら、独島の案内役よ」
「ええぇぇ!?」
ジヨンのぶっちゃけ話に半荘は大声で驚き、世界中の人々に笑われる事となった。




