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忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~  作者: ma-no
拾弐 最終配信 其の一

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73 沈没の巻き


「えっと……両端の船が沈んで行っているように見えるんだけど……」


 竹島から韓国艦隊を撮影していたジヨンは、小さく見えている両サイドの船が、隣の船と高さが合わなくなった事に気付いた。


「まぁ思った通りの結果だな。船員も飛び込んでいるぞ」


「見えるの!?」


 半荘の驚異的な視力を持ってすれば、遠くの景色を見るのもお茶の子さいさい。


「まぁな」


「あ! 両端に船が寄って行ってる……。あなた、いったい何をしたのよ!?」


「最初に沈めるって言っただろ? 有言実行したまでだ」


「どうやってよ!!」


「簡単な事だ。そこのナイフを拾って……」


 半荘の簡単な説明に、ジヨンはついて行けない。

 ついて行けない理由も簡単だ。

 投げたナイフが3キロも飛んで、高速船の装甲を突き破り、船底まで貫通した事が信じられないのだ。


 なので、わかる説明から求めるジヨン。

 いつ投げたのかと聞くと……


「さっきだ」


 何本投げたかと聞くと……


「四本だ」


 どうやって投げたかと聞くと……


「こうやってだ」


 半荘の、ゆっくりとした動作の遠投フォームを見たジヨンは……


「そんなので船が沈むわけないでしょ!」


 ツッコム。

 なので半荘は、ピースをしながら答える。


「忍チューバーだからできるんだ」


 半荘の答えに、ジヨンはため息しか出ない。


「はぁ……仮に当たったとして、ナイフで船を貫けるわけがないじゃない」


「できたから、船が沈んだんだろ?」


「何か違う武器を使ったんでしょ?」


「いや、このナイフだけだ。このナイフを角度を付けて……」


 半荘の説明はこうだ。

 すんごく速く投げたナイフは、船の前方、水面よりやや上に当たり、後方の船底から飛び出したとのこと。

 事実、半荘の言った通り、高速船は船底にできた長い切り込みから浸水し、塞ぐ事もできずに各部屋に水が溜まっている。

 その結果、船が沈む事で最初の穴からも水が流れ込み、さらに沈んで行った。


 その説明を聞いてもジヨンは信じられず、半荘に食い掛かる。


「はあ? ナイフでそんな事ができるわけがないじゃない!」


「じゃあさ~……今度は俺の投げる姿を撮ってくれよ。それで信じられるだろ?」


「わかったわ。でも、今度は絶対にトリックを暴いてやる!」



 ジヨンのやる気が出たところで、半荘は沈める船を指定して、韓国艦隊に警告をする。

 それから半荘は四本のナイフを手に持つと、三本を左手に、一本を右手に握ってジヨンの準備を待つ。

 ジヨンの撮影準備が整えば、半荘はピッチャーのように振りかぶった。


「え……ナイフは……」


 ジヨンは驚く。

 それは当然。

 半荘の動きは速すぎて、ジヨンの目にもカメラにも、半荘の振りかぶった動作と、腕を振り切った動作で止まっている姿しか見えなかったからだ。


「ナイフは、きっちり船に当たったぞ。じゃあ、次を投げるな」


 ジヨンは今度こそはと瞬きせずに見ていたが、何度やっても、半荘の動きは捉えきれずにナイフが消えていた。

 最後の一本も消えると、ジヨンは艦隊を写して呟く。


「うそ……また二隻が沈んでる……」


 遠目でも、救出に慌てる船の姿が見て取れ、ジヨンは愕然(がくぜん)としている。


「なぁ~? タネも仕掛けもないだろ~?」


 半荘の実演を見ても、ジヨンは半信半疑。

 呆然と沈み行く四隻の船を見ているしかない。


 そんなジヨンの事はほったらかして、半荘はカメラの前に立って声を掛ける。


「さてと……クノイチの撮影はここまでにして、一度切りま~す。では、しばらくしたら復活しますので、チャンネルはそのまま! 忍チューバーでした。ニンニン」


 半荘はそれだけ言うと、煙に包まれて姿を隠し、スマホをいじってⅤチューブの接続を切った。


「じゃあ、行こっか?」


 半荘は手を伸ばして、ジヨンからカメラを受け取ろうとしながら声を掛ける。


「どこに行くの?」


「シェルターだよ。そろそろ攻撃して来そうだ」


「確かに……」


 ジヨンは艦隊の動きを見ながらカメラを手渡し、半荘に続いて基地へと向かう。


「ヤベッ。ちょっと失礼」


「きゃっ」


 しばらく歩くと「ドーン」と音が鳴り、半荘はジヨンをお姫様抱っこする。


「何するのよ!」


「大砲が来た! 走るから喋るな!」


「えっ……は、はい!」


 さすがにこの事態には、ジヨンは素直に従い、口を閉じて半荘に身を任せる。



 韓国艦隊から放たれた艦砲は大外れ。

 島にも届いていないが、次が来るかもしれないと感じた半荘は、凄まじい速さで走り出すのであった。


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