68 罠の巻き
「……時間を稼ぐとか言ってなかった?」
東郷との定時連絡を終え、ジヨンの説教を終え、半荘は食堂で動画を見ながらダラダラしていた。
「ん?」
「ん? ……じゃないわよ! あれだけカッコいいこと言って盛り上がっていたじゃない!!」
怒りの再燃したジヨンに、半荘は面倒くさそうに言い訳する。
「だって俺から攻めると即開戦だろ? だからいま現在、時間を引き延ばす作業をしてるんだ」
「だったら、準備するとかあるでしょ!」
「う、うん……」
半荘は、ジヨンの怒りの表情にたじたじ。
重たい腰を上げ、洗濯室で洗っていた忍び装束に着替えて、食堂にてダラダラする。
「……準備はそれだけ?」
「えっと……まぁ……これですぐに動けるかな?」
「はぁ~~~」
大きなため息を吐くジヨン。
半荘の、あまりにもやる気のない態度に呆れ果てたようだ。
そこからはジヨンも半荘にツッコム事をやめ、自分のスマホをいじりながら時が過ぎるのを待つ。
昼食を終え、食後のコーヒーを飲んでダラダラしていると、半荘は立ち上がった。
「まさか……動きがあったの?」
「トイレだ」
「またあなたは……」
ジヨンにふざけているとジト目で見られた半荘は、真面目な顔で喋る。
「何か感じるから、いまの内にジヨンもトイレに行っておいたほうがいいぞ」
「まるで映画の前みたいな言い方ね……」
「漏らしてもしらないからな」
「わかったわよ」
ジヨンの冗談に、半荘は笑いもせずに食堂から出て行き、ジヨンも続く。
トイレを済ませた半荘は定時連絡を取り、日本政府の進捗状況を聞くが、まったく進展が無いと聞いて、ため息を吐く。
定時連絡の数分後、半荘はジヨンの顔を見る。
「ドローンが来たっぽい」
「今日は多いわね」
「それだけ切羽詰まっているんだろう。念のため、電子機器は預かるよ」
「ええ」
金属製の箱に、スマホ等の電子機器を全て入れて鍵を掛けると、半荘は基地から出て、港にてドローンを待つ。
「あれ? 向こうに行ってしまった……」
韓国からのドローン到着位置はいつも一緒だったのだが、今回は違うようだ。
建物の無い島に飛んで行き、岩肌に何かを落として、その場所でホバーリング。
ドローンは、何かを探しているようにも見える。
「お~い……届け先を間違うなよ~」
落とした物を、ドローンが拾おうと頑張っているように見えた半荘は、海を走ってお隣の島にお邪魔する。
そこで手紙を拾った半荘は、ドローンのカメラに向けて手を振り、離れて行く姿を見送る。
「へったくそな操縦だな。いつもの奴と違うのか?」
ドローンは竹島から離れて行くが、右に左に蛇行して、あまり進んでいない。
そんなドローンを見ていても仕方がないと割り切った半荘は、手紙に目を通す。
「ふ~ん……最後通告か」
手紙の内容は、「ただちに独島から出ないと命は無い」との脅し。
いつもより強い口調で書かれていた。
半荘は手紙を読み終えるとくしゃっと握り締め、ドローンのプロペラの音を聞きながら建物のある島に振り向く。
「あ……ドローンがもう一機……マズイ!!」
半荘が振り向くと、韓国艦隊に戻ろうとしていたドローンとは別に、基地に向かうドローンが飛んでいた。
そのドローンはすでに基地に近く、半荘は急いで戻るが、海を渡り切ってクナイを構えたところで、基地の真上から四角い物体が落とされた。
その数秒後、四角い物体が基地の屋根に接触した瞬間、爆発音と甲高い音が響き渡るのであった。




