58 国連会議 其の二
国連会議は韓国のヨンホと、日本の島田の口喧嘩で笑いが起こっていたが、議題は忍チューバーだけでない。
参加者が大多数となった事で、この機に、前回話がまったく進まなかった議題を
次回の総会の前に少し進めようと議長は考えた。
なので、一番の関心事なのだが、日本と韓国のクールダウンを待つ間に、違う議題を話し合う事となった。
それからは、だいたいが中東関係の話で、アメリカとロシアが主導で話し合うのだが、ほとんどの国はあまり話に入ろうとしない。
遠い他国の話なので、関係の無い事だと思っているのだろう。
それに、大国に睨まれる事は、国益にそぐわないと口を閉ざしてしまっている感が大きい。
ただし、アメリカとロシアは違う。
日本と韓国とのやり取りと同じぐらいバチバチとやり合い、結局は何も解決案を示さないまま話は終わった。
議題は移り、南シナ海の話に移ると、今度はアメリカと中国がやり合い、ここでも他国は話に入ろうとしない。
唯一入るとしたら近隣諸国だけで、それもアメリカに泣き付くか、中国に味方するかぐらいなので、やはり何も決まらないまま終わる。
結局、何も話が進展しないので、議長を務める者は忍チューバ―の話に戻す。
と言うより、出席者が飽きていたので、面白い話をしたくなったようだ。
一息ついた議長は、ニヤニヤしながら日本と韓国を見る。
『それで、どうするのですか?』
ざっくりとした質問に、我先に手を上げたのは韓国のヨンホ。
『我が国の問題なのですから、誰も口出ししなくて問題ありません。それと、日本艦隊には帰還を求めます。このままでは、宣戦布告と受け取ってしまいそうですからね』
ヨンホの言葉が途切れると、議長は日本の島田を見る。
『我が国の領土「竹島」で、我が国の国民が砲撃を受けているのですから、韓国には即刻、艦隊の帰還を求めます。先ほど宣戦布告とおっしゃっていましたが、韓国の行動こそ、宣戦布告だとわかっておっしゃっているのですか?』
島田の発言で、場がピリリと引き締まる。
ヨンホからしたら、「独島」を「竹島」と呼ばれたから怒りを覚えるのだが、他国からすれば、日本の領土で起こった事だと感じたようだ。
『「独島」は我が国の領土です! 自国にテロリストが上陸して、自衛をしたに過ぎません!!』
『いえ。「竹島」は我が国の領土。サンフランシスコ平和条約にも、韓国に返還する島に、竹島は含まれていなかったでしょう。この事から「竹島」は、間違える事もなく、我が国の領土です』
『我が国の警備隊が、70年以上常駐している島が日本の領土なわけがないでしょう』
『戦後のどさくさで奪っておいて、どの口が言うのだか……』
二人のラリーは忍チューバーから離れ、どんどん領地問題へと移り、周りの出席者は何故かガッカリしている。
『「独島」は、日本に侵略されて奪われたのですから、非道な日本から取り返したまでです』
『またファンタジーですか……韓国人は、ファンタジーが好きですね』
『何処がファンタジーだと言うのですか!』
『そもそも、日本は韓国と戦争をした事がありません。自分の都合のいいように歴史を歪曲するからファンタジーだと言うのです。忍チューバーの件でもそうでしたでしょ? 漂流して助けを求めた忍チューバーを殺そうとしたにも関わらず、テロリストに仕立て上げた。こんな国の言葉、誰が信じます??』
場がしらけかけたと感じた島田は、忍チューバーを出して皆の注目を集めた。
『忍チューバーと、いまの議論は違うでしょう!』
『いいえ。同じです。嘘をついて「竹島」を自国の領土と言っているのですからね』
『嘘なんてついてません!』
『では、国際司法裁判所で、白黒ハッキリつけましょう』
『そ、それは……』
『できないのですか?』
『我が国の領土と決まっているものを、わざわざ国際司法裁判所に委ねる必要はないですからね』
『皆さん聞きました? 韓国は自信が無いから逃げました。嘘をついているから、ハッキリさせたくないのです!』
口喧嘩は島田が勝利……
『皆さん! 世界大戦を起こした戦犯の国を、信じるのですか!!』
のように見えたが、一発でひっくり返されてしまった。
いまだに国連の敵国条項が効いているようだ。




