35 誤算……
門大統領は、側近の開いたノートパソコンを注視すると、そこにはとんでもない動画が映し出されていた。
あまりにも衝撃的な内容だったので、長い動画を十分ほど過ぎるまで、声が出なかった。
しかし、その動画を全て見ているわけにはいかず、後半を数分見てから、門大統領は椅子に腰を落とした。
『な、何故、こんな動画が配信されているのだ……』
『現在調査中です』
『消せ! 職員全てで、消して消して消しまくれ!!』
『無理です……全世界に配信され、止めようもありません』
側近の言葉に、頭を抱える門大統領。
それは当然。
とんでもない動画とは、忍チューバーが竹島に上陸したその日の動画が、編集なしで配信されているからだ。
この動画で、忍チューバーが殺戮者と認定した門大統領の嘘がバレる事は必至なのだから……
『ネ、ネット! 独島のネットは、どうなっている!!』
ようやく、忍チューバーがどうやって動画を更新したかに言及する門大統領。
現在、竹島のネット環境は、本土側から操作して遮断しているはずなので、忍チューバーが更新できるわけがないのだが……
『そこも調査中ですが、繋がった形跡はありません』
『じゃあ、どうやって……』
『おそらくですが、ハッキングを受けたと報告があったので、そのハッカーがやり手で、痕跡も消したかと……』
『もういい! その機械は破壊しろ!!』
『は、はい。それで、このあとの対応は……』
側近の質問に、門大統領は黙り込む。
このままでは、世界中から門大統領は嘘つき呼ばわりされる。
いや、すでにネットの中では言われている。
国民にも嘘つき呼ばわりされると、政権に大ダメージとなってしまう。
最悪、その件で、大統領を辞めたあとに国民から裁かれる。
ここで舵取りを失敗すると、確実に門大統領は失脚するだろう……
黙り込んで考えていた門大統領は、決断する。
『深夜の作戦を発表する』
『しかし、それを発表してしまうと、虐殺していない忍チューバーを、殺そうとしたと発表するような事ですよ?』
『そこは、フェイクニュースに振り回されたと言って、直前に情報を手に入れて話し合いに向かった事にする。その者を全員殺したとなれば、体裁はとれるだろう』
『確かに筋は通っていますが、いまさら遅いのでは?』
側近の質問に、門大統領は椅子に深く座り直す。
『世界は納得しないだろうが、国民は、テロリストから独島を取り返せば納得するはずだ』
『確かに、上手く誘導できれば、支持率は下がらないかもしれません。ですが、昨夜の動画が更新されるかもしれませんよ?』
『まだ更新していないところを見ると、繋がったのは数分だろう。それも機械を潰してしまえば、金輪際、更新はできん』
『なるほど……』
側近が納得したところで、門大統領は勢いよく立ち上がる。
『私は記者会見を開く! お前は各所に急いで連絡だ!!』
『はい!!』
こうして竹島に繋がる通信機器は破壊され、門大統領も予定通り記者会見で各種発表をする。
その記者会見では、今まで門大統領のやる事に肯定的であったマスコミは褒め称え、否定的であったマスコミは糾弾する。
マスコミの意見は真っ二つに別れたのだが、門大統領はまずまずといった顔になった。
ここから予想される支持率は、50パーセント。
ちょっと前まで40パーセントを切っていたので、まだまだ政権を維持するには十分な数字だからだ。
なので、このまま大艦隊で独島を取り返せば、政権は安泰だと確信する門大統領であった。




