24 口喧嘩 其の一の巻き
「バーカ、バーカ!」
「アホ~、アホ~!」
領土問題から発展した口喧嘩は、しだいに子供染みた口喧嘩に変わり、ジヨンと半荘が疲れた頃に、我に返って止まる事となった。
「この話は、やめよっか?」
「お、おう……」
お互い熱くなり過ぎたと反省してモジモジしながら見つめ合い、ジヨンは次の話に移る。
「私は帰してくれるの?」
「あ~……どうだろう?」
「いや、あなたが立てこもり犯なんだから、わかるでしょ」
「韓国から見たら俺は立てこもり犯だろうけど、日本から見たらどうよ? 俺は韓国軍に監禁されているようなものだ」
「あ……」
二人が祖国に帰るには、どちらかの軍の船に乗る以外の方法がない。
そうなった場合、どちらかは不法入国として、係争地がどの国の領土と決定するかのように裁かれる事になる。
「だから、日本に来ないか?」
「あなたが韓国に来ればいいのよ」
「だって韓国はめちゃくちゃするだろ? 最悪俺は死罪だ。じゃなくても、何十年も監禁されてしまいそうじゃないか」
「不法入国なんだから、強制送還で終わりよ。そんな法を無視する国じゃないわ。考えすぎよ」
ジヨンの説得に、半荘は呆れた顔で手を広げる。
「それは絶対無いって~。今頃韓国では、俺は極悪人として報じられているはずだ。そうなったら、民意がどうのとか言って、罪が跳ね上がるに決まっている」
「それこそ無いわ。韓国は、法律を無視するような国じゃないからね」
「どこが? じゃあ、日本で盗まれた仏像を返さないのは、どうしてなんだ?」
「それは、元々韓国にあった物を、日本が盗んだからじゃない」
「いや、盗んだんじゃなくて、宗教弾圧が起きて、燃やされそうになったから、日本に運ばれたんじゃなかったか?」
今度はジヨンが、呆れた顔になる。
「それが盗人猛々しいって言うのよ」
「じゃあさ、仮に盗んでいたとして、ユネスコ条約ってのがあるだろ。その条約に則ると、日本に返してから話し合うべきだろ?」
「そんな条約、盗まれた側なんだから、関係無いわよ」
「それって、盗まれた物なら、盗み返していいって事か?」
「そうは言ってないわよ。今回は、たまたま泥棒が韓国に持ち込んだから、受け取った人は、善意の第三者よ」
「どこに善意があった? 韓国人が盗んで、韓国に持ち込んだんだから、どう考えても確信犯だ」
「それを言ったら日本なんて、韓国から盗みまくっているんだから、よっぽどの犯罪者よ」
ジヨンの言い分に、納得できない半荘は反論する。
「また話を大きくする……本当は、おかしいと思ってるんだろ?」
「何がおかしいのよ?」
「韓国の最高裁は、民意に流され過ぎって事だよ。日本に関する事になると、必ず日本は正しくないって言うからな」
「日本が我が国にした事を考えたら、当然だと思うわね」
「その考え方がおかしいんだよ。戦後から、いったい何年経ってると思っているんだ?」
「たった70年で、怒りが消えると思う?」
「いや、俺達は、その時代の人間じゃないんだから、俺達が怒る事じゃなくない?」
お互いの主張はすれ違い、ジヨンは半荘を睨むように見る。
「これだから日本人は……反省する気がないのね」
「反省は過去の人がして来ただろ。俺達は過去に囚われず、仲良くしたほうが、未来にとっていいはずだ」
「確かに私もそう思うけど……怒りは消えないわ……」
双方の意見が一致しかけたが、ジヨンにはまだ足りないようだ。
「そりゃ、反日政策なんてしてるからだよ。過去の歴史を伝えるのは正しいけど、湾曲した歴史を教えるのは違うだろ?」
「湾曲した? 政府が嘘を教えているとでも言いたいの?」
「そうだ。徴用工の写真だって、痩せ細った日本人の写真なのに、韓国人だと言い張ってニューヨークにまで大々的に広告を打ったじゃないか」
「そ、それぐらいの間違いはあるわよ……」
「まぁ日本でも、歴史上の人物の絵が、実は別人って例はあるな」
やや劣勢になっていたジヨンは、半荘の例を聞いて顔が明るくなる。
「ほらね」
「勝ち誇った顔をしているけど、こっちは何百年も前の話だからな? そっちは、日本に確認を取りさえすれば、間違う事はなかったんだからな?」
「うっ……」
こうして、二人の静かな戦いは、ジヨンが口ごもる事で、半荘の勝利となるのであっ……
「だからって、日本のやった事は許されない事なんだからね!!」
いや、ますますジヨンのやる気が出て、ヒートアップするのであった。




