雨が降ってると家畜たちも暇そうだ
さて、このあたりは乾季と雨季がはっきりしていて、夏の間は殆ど雨がふらず、冬になるとしとしと雨が降ってくる。
この辺は基本的には雪になるほど寒くはないのはありがたい。
「雪が積もると色々生活が大変だからな」
俺の言葉にリーリスが聞いてきた。
「そうなの?」
俺は頷いて言葉を続けた。
「まあ、中途半端に雨よりは雪のほうが楽な場合もないわけでもないけど
雪がたっぷり積もった後に溶けてぬかるむと色々大変だからな」
「なるほど、其れもそうね。
家の煉瓦がぬかるんで溶けてしまっては困るわ」
リーリスが言うようにたとえば干しただけの焼いているわけではない煉瓦の家が雪に覆われた後で春先に大量の水に浸されたりすると、家の重さで煉瓦が潰れてしまったりする。
だから実際時代が下ると北の方の住居は地面に近いところは焼いた煉瓦が用いられるようになっていく。
まあ、このあたりはそれほど多量に雨が降るわけでもなく雪が積もるわけでもないのでそこまで心配はいらないけどな。
麦は比較的乾燥していても大丈夫とは言え育つためにはやはりある程度の水分は必要だからその辺りは難しいところでも在るのだけど。
しかし、雨降りだと家畜の山羊や羊、ロバなどは狭い部屋にこもりきりになるので彼らにとっては退屈らしい。
しかし山羊は雨に弱いので雨が降ってる時は外に出す訳にはいかない。
ひまだなー運動したいなーという目で母山羊が俺を見てくる。
「まあ、お前さんも外を歩いたり走ったりしたいのかもしれないが我慢してくれよ」
母山羊は首を傾げるような仕草で俺を見ている。
暇だなやだなーと思ってるのかもしれないが、自分のためだから我慢してほしい。
山羊と違い羊の毛は油が多いので多少の雨なら弾くので外に出してもいいのだが、問題なのは雨具がないということ。
人間が雨具がない状態で外に出て濡れて戻ってきても木は貴重なわけだからあまり無駄に燃料を使うことはできないのだな。
そして冬の時期は山羊や羊は多くが妊娠しており春先の暖かく雨が少ない時期になると子どもが生まれ始める、だからいまは一年で一番大事な時期でも在るのだ。
「お前さんは相変わらずマイペースだな」
お母さんロバは雨にもかかわらず、たまにふらっと外に出て、またふらっと戻ってきたりする。
まあ、もともとは野生動物なわけだから雨に降られても大して問題はないのかもしれない。
子どもロバも一緒に外に出かけたりする。
まあ、無断でロバを捕まえて食べたりするようなやつはいないけどな。
それに子どもロバはだんだん俺になついてきた気がする。
「よーしよし、いいこだぞ」
抜けた毛を束ねたブラシもどきで毛をすいてやると気持ちよいらしい。
ロバは結構賢いので褒めたら行動に従うし、やっちゃダメなことをした直後に怒ってやれば、怒られたことはやったら駄目だとわかるらしい。
犬のように餌でしつけをすることはしないが、犬ほど完璧にしつけることができないのは彼らの性格上どうしようもない。
そして羊だ。
「ホントお前さんたちはいつもみんな同じ方向を向いてて
同じように餌を食べていて面白いよな」
羊の群れには、決まったリーダーはおらず羊に間には上下関係もない。
そういったタイプを家畜にするのは本来大変なんだが、羊はその群れの中のどれか1頭が、何かに気づいて反応すると、その他の羊もその羊の行動にみんな追従する。
たとえば1頭が小屋に帰りだすと、その他の羊も全部あとに続いて小屋に戻ってきたりする。
羊にとっては自分だけ別の行動をすることは非常に不安なことで、1頭だけになるとパニック状態になってしまったりする。
こうした習性は、羊の群れが肉食獣などの敵から逃げるために身についた習性なわけなのだが、殆どの羊はなぜ周りと同じ行動をしているのか理解して行動しているわけではなかったりする。
まあ、羊はとにかく他の羊と同じ行動するためにいつも同じ向きを向いてるわけさ。
「まあ、明日には雨が止んだらみんな外に出してやるから
今日のところはおとなしくしていてくれな」
まあ、寒い時期に雨がふられると人間もたいしてやれることがないのは変わらなかったりする。
なのでこうやって家畜小屋でこいつらの世話をするのも一種の暇つぶしとも言える。
子どもロバがもう少し大きくなったら背中に荷物を載せたり俺を載せて歩いたりできるようになるといいんだけどな。




