顔料で塗るだけだとすぐに消えてしまうので長く残るものを考えよう
さて、赤土と動物の血や油を混ぜた顔料で、洞窟の入口にすでにここを使っているものが居るという意思表示のためのわかりやすい目印を書くことはできた。
ただ現状の問題は顔料を塗りつけただけなので、風雨にさらされるとすぐ消えてしまう可能性が高いということだ。
まあ、このあたりは日本の冬の太平洋側と同じで、海のある西から来る湿気をともなった風は、山を超える時に雨になってしまうので、山を超えたこのあたりでは雨は殆ど振らないんだけどな。
それがこのあたりが色部rつの殆どない荒野が一面に広がってる理由でもあるんだが、そのおかげもあって人が少ないのは助かったというべきか。
とはいえ雨が全く降らないわけではないので雨対策はしたい。
絵の表面を陶器などに使う「釉」のようなもので覆えれば、水が染み込むのを防ぐ事はできるんだけどな。
いや釉自体は紀元前四千年ごろの古代にはすでに石材に用いられていたから、現在でも灰釉や長石の粉末を使えばなんとかなるんだろうけど、壁にガラス質の粉を溶かすような熱を加えることは無理だろ。
ん、ここは逆転の発想で行けばいいのか。
その方法とは象嵌、この場合は陶象嵌だな。
具体的には色のついたレンガやタイルに釉になるものをかけて焼成しそれを道路に並べ、模様や絵を書いているのを思い浮かべればいいだろう。
厳密には陶器はまだ作れないので炻器での象嵌だが。
象嵌とは、一つの素材の表面に別の素材を「象って」「嵌る」ことで模様を表現する伝統的な工芸技法。
金属(金工象嵌)、木材(木工象嵌)、陶磁器(陶象嵌)など様々な素材で行われている。
で、やるとしたら粘土板に赤い石や赤くなるように顔料を練り込んだ粘土を焼いたものを地面に埋め込んで目印にするとともに、利用者がエリコの住人であることの証明にするために、それなりの大きさの粘土板に色のついたものをはめ込んで、長石の粉末をかけて粘土板を焼成すればいいか。
今はそんなんでかい焼き窯がないから、粘土板はそこそこの大きさの皿くらいしかできないが、ないよりはいいだろう。
というわけで俺は赤い色をした石や粘土、それに長石の結晶を集め、粘土に赤土と動物の血や脂を混ぜたものを混ぜ込んで楕円形にしたあと、適当な大きさの粘土板にエリコの紋章の形にはめ込んでいく。
「ま、こんなもんか」
それを見ていたアイシャが俺に聞いてきた。
「とーしゃ、なにやてるのー」
「ああ、前に書いた壁の模様を長く保てるように、色を付けた粘土を焼いてそれをならべて模様を作ってるんだ」
「おもしろそ-。
あちしもやるー」
「はいはい、じゃあ一緒にやるか」
「やるー」
というわけでアイシャといっしょに色を付けた粘土をこねや治してると、今回もリーリスもやりたがったので家族全員で頃付きの粘土団子をこねた。
そして形が整ったら長石を軽石で削って粉末を作り、それを色付き粘土をはめ込んだ粘土板の上に均等になるようにまいてから、パンを焼くための焼き窯になるアースオーブンをレンガなどを積み上げて作ってしまおう。
窯の入り口部分には日干しレンガをアーチにし、その奥に砂でまん丸の砂山を作って、その表面に粘土を10センチ程度の厚さで練りつけ、その後乾燥させる。
で、粘土が固まったら中の砂を掻き出し、更に乾燥させる。
こうしてやればアースオーブンが出来上がるわけだ。
石窯や煉瓦窯より加工の手間はかからないけど乾燥に時間はかかるのがデメリットではある。
あと乾燥するときにひび割れたら粘土で補修したりする。
でもまあ大した材料や道具工具が必要なく、そこそこ大きなオーブンが作れるのはとてもいい。
オーブンができる頃には粘土板も乾燥で来たるのでそれを焼いてみた。
「うっし、ちゃんとできたな」
焼成した象嵌をオーブンから取り出してみればちゃんとできていた。
それとは別に色付きレンガを土を掘って埋めて、同じような目印も作ったしこれで目的は達成できたな。
そして俺だけではなくアイシャやリーリスも作り方を覚えたから修理するときもみんなでやれそうだ。




