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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

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第86話 自己犠牲

ここから新章となります。

 風間の様子を見た後、小澤は香川と一緒に部屋を出て廊下を歩いていた。


「ところで彼の家族には連絡を?」


 香川が思い出したように問いかけた。風間はとっくに成人を迎えているが、それでも今回のような事態になればギルドから家族に連絡をいれる必要があると、香川は考えていたようだ。


「そっちはこれからだな。調べはついてるんだが」

「そうなのですね。以前の話で放置ダンジョンで暮らしていると言っていて気になりましたが、ご両親は健在なようで何よりです」

「ふむ――」

 

 香川の話を聞いた小澤は、短く唸り何か考えを巡らせているようだった。


「健在か、しかしまさかあの風間だったとはな」


 小澤がボソリと囁くように口にした。


「何か言いましたか?」

「いや、こっちの話だ」

「そうですか――」


 小澤の囁きは香川には聞こえていなかったようだ。そのまま廊下を歩く二人だったが、その途中で香川が難しい顔を見せていた。


「何だ小難しい顔してやがるじゃねぇか。折角の美人が台無しだぞ?」

「からかわないでください。それよりもマスター、彼は本当に合格で良かったのでしょうか?」


 そんなことを問いかけてきた香川を見ながら小澤が目を点にさせた。


「なんだ唐突に。既に決定したことだろう? それに風間には特に問題になるような点はないだろう?」

「――確かにそうですが」


 そこで口ごもる香川に小澤が更に問う。


「何か不安要素があるのか?」

「――なんとなくですが、彼は自分を犠牲にしてでも人を優先させるタイプに思えます。危険を顧みず相手の為に動く、そんな性格ではいずれまた危ない目に合うかもしれない。非常に危うく思えます」


 そういった香川の表情は真剣であり、どことなく思い詰めたようでもあった。


「だとしてもそれが理由で冒険者の資格なしとは言えない。むしろそれは冒険者にとって必要な事と思う連中も多いだろう」

「その結果命を失ってはどうしようもないではありませんか!」

 

 香川が声を張り上げた。いつも見せているクールな印象とは掛け離れた感情的な声だった。


「――まさかお前、まだアイツ(・・・)のことを引き摺っているのか?」


 一瞬の間を置いて発せられた小澤の言葉で香川がハッとした顔を見せた。


「申し訳ございません。ギルドの職員として今の発言は不適切でした。頭を冷やすことにします」

 

 そこまで言うと香川が足早に玄関に向かっていった。


「香川。あの事件はお前が悪いわけじゃない。忘れろとは言わないが……」

「勿論わかってます。もう過去のことですから」


 そう言い残し香川は先に玄関から出ていった。残された小澤が後頭部を擦って呟く。


「あのバカ、風間にアイツを重ねやがって――確かに奴も無鉄砲なところはあったけどな……」


 そう口にした小澤の瞳はどこか淋しげだった――






◆?◆


 冒険者ギルドと提携しているという病院で入院することになった。といっても念の為の検査入院だ。そこまで心配することではないだろう。


 検査は明日のお昼まで予定されていてそれで問題なければ退院と聞いた。


 まぁ今日はもう時間が時間だからな。とりあえず後遺症に残るようなことになってないかの検査は一通り受けたけど、更に細かい検査を翌日にやるということらしい。


 病院についてからは秋月が色々と準備して持ってきてくれると言っていた。申し訳なくもあったけど、配信でお世話になっているのだからと秋月は笑って言ってくれた。


「ふぅ。やっぱり検査は疲れるなぁ」

「ワン♪」

「ピキィ~♪」

「マァ~♪」


 一通りの検査が終わって病室に戻ってからは三匹を思いっきり撫で構ってみせた。俺自身も癒されるしモコ、ラム、マールの三匹も嬉しそうだし実にウィンウィンな関係だな。

 

 それにしてもまさか個室に入れさせてもらえるとはね。モコたちもいるから気を使ってくれたのかもしれない。


「風間はいるかい?」


 俺がモコたちと戯れていると、コンコンっと個室のドアを叩く音と一緒に聞き覚えのある声が飛び込んできた。


「はい。大丈夫ですよ」

「なら失礼するよ」

「やっほ~お見舞いに来たよ~」

「――銃で撃たれたと聞いたけど……」

「貴重な経験だと思うわ」


 俺が返事をすると中に見知った女性四人組が姿を見せた。そう、鬼輝夜のね――

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