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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

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第80話 一時間なんてあっという間だった

 その後も探索は続く。モンスターとの戦いもあったし時折、熊谷が立ち止まり罠を解除してくれた。難易度が低いダンジョンでは罠もわかりやすい位置にあり苦労はないらしい。


「流石盗賊のジョブだけあるな。凄く助かるよ」

「うん。盗賊って聞くとちょっと怖いイメージあるけど、探索では大事なんだね」

「ワンワン」

「ピキィ~」

「マァ~」


 俺や愛川、それに三匹からも感心され熊谷が照れたように後頭部を擦っていた。


「そ、そんな褒められたって何も出ねぇぞ」

「ハッハッハ。純粋に褒めているのだから素直に受け止めるといいさ」


 中山が熊谷の背中をバンバンっと叩いてみせた。なんだかんだでここの皆とはやりやすいな。ダンジョン探索の時にパーティーを組むというのはこんな感じなのかもしれない。


「最初は絡まれてどうなるかと思ったもんだけどな」

 

 於呂に絡まれたことを思い出し、ふいに口に出た。結局あの男はテストの段階で退場となったな。この講習の中であいつだけが浮いていたと思う。


「そういえば、風間はあいつと一悶着あったんだったな。だったら少しは気をつけた方がいいかもな」


 俺の声が聞こえたのか、熊谷が釘を刺すように言ってきた。この様子から見るに、あいつのことを知っているのだろうか。


「何だあの男のことを知っているのか?」


 俺の疑問を引き継ぐように中山が熊谷に聞き返していた。熊谷は額に手をやり目を眇めつつ答える。


「あぁ。俺もヤンチャしていた時があって、その時に話を聞いた事があるんだ。あいつは結構ヤバい奴で、中学や高校の時から問題を起こしてたみたいでな、気に入らないって理由で鉄パイプで教師を殴り三階の窓から突き落としたり、振られた女子の家に火をつけたり、ムシャクシャしたからと無免許で車を乗り回して通行人を轢いて回ったりした奴だからな」

 

 とんでもなさすぎだろう! 話しぶりから、ちょっとした不良行為でもしてたかと思えば、ヤンチャで済まされないレベルの事件を起こしてるし!


「ちょ、ちょっとそれ危なすぎない?」

「まぁ狂犬とか言われてたしな」

「狂犬じゃ済まんだろう。よく講習までこれたものだな」


 中山の発言で俺を含めた皆の視線が香川さんに向いた。いや、彼女を責めるつもりはないんだが、一応鑑定とか受けたわけだから、その時点でわからなかったのかなと思う。


「はぁ――あまり探索と関係ない話をしてる暇はないと思うのですが、言いたいことはわかります」


 香川さんがため息混じりに眼鏡を直す仕草を見せた。確かに探索中ではあるのだがどうしても気になってしまう。


「鑑定については、よく誤解があるのですが、別に鑑定をしたからといって全ての罪が見れるというわけではないんですよ。むしろ鑑定で確認出来るのはジョブを手にした後の事だけですからね」

 

 香川さんの答えに少し驚いた。


「つまりジョブを持ってない時のことはわからない?」

「そうですね。だから鑑定は一般人には効果がありません。それに鑑定が出来る品物も、ダンジョンやモンスターから手に入れた物限定ですからね」


 そうだったのか。つまり鑑定はダンジョンやジョブ限定で効果を発揮できるスキルだということなんだな。


「何だよ意外と不便なんだな」

「ですが、探索においては役に立ちます。それにジョブを手に入れた人間が罪を起こさない為の抑止力にはなります」


 確かに言われてみればそうだな。それに、だからこそ冒険者ギルドと警察で棲み分けが出来ているとも言えるのかもしれない。


「そもそも、制限なく何でも鑑定が出来るスキルなどがあったなら国が放っておくわけがないですからね」


 付け加えるように香川さんが言った。それを聞いて確かにと思った。もしどんな相手でも自由に鑑定して情報が見られるスキルなんてものがあったなら、例えば国のトップなどは気が気じゃないだろうし。


「まぁ、それなら仕方ないよな。それに結局あいつは失格になったわけだし、それで良しとするしかないよな」

「クゥ~ン」

「スピィ~……」

「マァ~……」


 俺の答えを聞いてモコたちが不安そうな声を上げていた。話を聞いて心配に思ったのかもしれないが、於呂が冒険者になることはないのだろうからな。


「まぁ、あの男のことなど考えていても仕方ないだろう」

「それもそうだな。悪いな変なことを言って」

「いや大丈夫だよ。それに俺を心配してのことなわけだし」

 

 熊谷が敢えて言ってくれたからこそ、どこかで出くわしたら注意しようって思えるわけだし。


 そして俺たちは気を取り直して探索を続けた。その後は大きめのネズミと遭遇し戦闘になった。数は多かったがそこまで強くはなく、愛川のメイスでも倒されたしモコの格闘とラムの水弾、それにマールの魔法も活躍した。


 勿論今回は俺も両手の鎌で応戦。何とか一匹倒すことが出来たな。勿論中山や熊谷も大活躍だった。


「このモンスターは尻尾が素材となります。手分けしてそれだけ回収出来たら戻るとしましょう」


 結局探索はここで終わった。とりあえず基本的な事はこれでなんとかなったということだろうか。しかし改めて考えると一時間はあっという間だったな。


 そして素材も無事回収し終えた俺たちはダンジョンの出入り口まで戻ったわけだが――

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