第65話 ダンジョンでの動画撮影
「モコちゃ~ん」
「ワン♪」
「ラムちゃ~ん」
「ピキィ♪」
「マールちゃ~ん」
「マァ~♪」
「風間さ~ん」
「は~い♪ てやらんから!」
モコ、ラム、マールと続いて、俺にも同じノリで来るからつい乗せられてポージングしそうになったじゃないか!
ま、こういうのも楽しいけどな。鬼輝夜の皆もサービス精神旺盛で、三匹と上手く絡んで撮影に協力してくれた。
「よし。大体片付いたな」
「やったね~モコちゃ~ん」
「ワン♪」
「お前もよく頑張ったな。根性あるじゃねぇか」
「マァ~♪」
「――柔らかい」
「ピキィ~♪」
鬼輝夜の皆のおかげで汚されたダンジョンもすっかり綺麗になった。なんならあの捕まった連中が来る前よりも更に綺麗に片付いたぐらいだぞ。
「皆のおかげで一気に綺麗になったよ。本当に感謝してる」
「いいってことよ。冒険者がやらかしたことは冒険者でケジメつけないとねぇ」
「本当にありがとうございました。感謝してもしきれません」
俺に続いて秋月も四人に御礼を言っていた。これはこの山の管理者としての御礼もあるのだろうな。
「よし。それじゃあ折角綺麗になったし皆でキャンプ飯とするか! 丁度材料もあるし!」
「おいおい、それはあたしらもってことかい?」
「勿論。こういう時の食事は大勢いたほうがいいからね」
秋月が結構色々と買ってきてくれてたし、帝が持ってきてくれた食材もあるからバーベキューをするには丁度いいと思った。
俺は準備を始め、結局皆も手伝ってくれたけど和気藹々とした時間を楽しんだ。
「何かごちそうにまでなってしまって、却って悪かったね」
「そんなことありませんよ。俺も久々に大勢でキャンプ出来た気分になれて楽しかったし」
「私も楽しかったですよ~そうだ~よかったら今度二人で――」
「ゴホンゴホン!」
蓬莱がそんな冗談を言ってきたところで秋月が咳払いしていた。ま、まぁ二人でと言うのは冗談にしてもまた皆で集まれば楽しいかもな。
「弟さんにも宜しく言っておいてください」
「あぁ。あいつも喜ぶよ。それじゃあ動画も楽しみにしてるよ」
こうして鬼輝夜の面々も下山していった。そして俺たちはダンジョン内に戻ったのだが。
「風間さん。動画のチェックを手伝ってもらってもいいですか?」
「あぁ、そうだったな。これで編集が終わればいよいよ動画公開かぁ~」
いきなりそんなに見られるかはわからないけど、それでもちょっと緊張するかもしれない。
とは言え、動画をチェックしていて改めて思ったのは――ウチの子可愛すぎだろうーーーーーー! ということだ。そんなこと思いながら動画をチェックしているとふと俺のスマフォが震えた。
「悪いちょっと出てくるよ」
「はい。こっちはチェック続けておきますね」
そして俺はスマフォを確認したのだが、名前には会社で一緒の部署だった後輩の名前があった。
『あ、風間先輩出てくれた良かった~』
「おう。久しぶりだな」
『はい。先輩はどうですか? 今は何を?』
そう聞かれて返答に困った。冒険者登録はしたが正式に動いているわけでもないからな。
「ま、まぁボチボチやってるよ。色々縁もあってな」
『そうなのですね。先輩が元気ならいいのですが』
「あぁ気を使ってくれて悪いな。それにしても何だ? この時間まだ仕事だろう?」
『はい。それで聞きたくて。〇〇商事は風間先輩の担当だったじゃないですかぁ。今、僕が担当しているんですが――』
後輩からは引き継ぎについて相談を受けた。どうやら今の案件で資料が見当たらなくて困ってるという話だった。俺は記憶を頼りに教えてやったのだが。
『そこは見てなかったかも! 助かりました』
「あぁ。だけどそのあたりは引継書にも書いておいた筈なんだがな」
『え? そうなんですか? おかしいな。阿久津の奴に聞いたら、何も残さず辞めていったとか言っていたので変だなとは思ったんですが』
アイツか。また適当なことばかりいいやがって。しかしちょっと引っかかるな。
「一応あいつも先輩だろう。近くにいないのかもだが、一応は敬称付けた方がよくないか?」
『えぇ~。先輩は本当そういうところ真面目ですね。でもあいつら今は社内でも評判悪いんですよ。仕事もミスが多くなったクセに、それをこっちになすりつけてくるし、本当最悪ですからね。先輩戻ってきてくださいよ~』
「はは、流石にもうそっちには戻れないよ。だけど、そうか――」
『それに、あの二人何だか冒険者登録したとかで、それもやたら自慢してきて鼻につくんですよね』
そうか。社内でも言いふらしてるんだな。冒険者は兼業も多く、国としてもそれは認めてるからな。
しかしあの二人という言い方、つまり元いた会社でも阿久津と未瑠が付き合っていることは知られてるってことか。
「あいつらは今も会社か?」
『いえ。今日は講習があるとかいって二人揃って休んでますよ。こっちは大変だってのにいい気なもんですよ』
「そうか……大変だな。まぁ、また困ったことがあったら連絡くれよ」
『わかりました! 本当先輩は頼りになります。それと正直言ってあの件も自分は納得してませんからね。あの後も仲間集めて抗議したんですから! 結局会社はまともに取り合ってくれなかったんですけどね……』
最後はちょっと申し訳無さそうでもあったな。でも、俺の為に動いてくれていた人がいたのは純粋に嬉しかった。
「俺のことを信じてくれていたのがわかっただけでも良かったよ。ありがとうな。それじゃあな」
『はい。落ち着いたら呑みにでも行きたいですね。それじゃあ!』
そして俺は通話を終えた。しかしあの二人、一体何をやってるんだか。ま、あいつらのことなんて俺にはもう関係ないことだけどな――




