第61話 鬼姫の弟と一緒に朝食を摂った
バーナーを準備し材料を切る。帝が持ってきてくれた食材にはハムや卵、ベーコン、チーズ、ウィンナーなどが入っていた。
うん。これならピッタリのがあるな。俺はリュックの中から道具を一つ取り出して見せる。
「ワウ?」
「ピキィ?」
「マッ?」
モコ、ラム、マールがなんだろうと俺の取り出した道具を見ていた。
「これはホットサンドメーカーだ。これで文字通りホットサンドを作ろうと思う」
「ワン!」
「ピキィ!」
「マァ~!」
俺が作業台の上に取り出したホットサンドメーカーを見て三匹は興味津々といった様子だった。俺は早速材料を並べて調理を開始する。
「っと、その前に食パンを用意しておかないとな」
袋の中に手を突っ込むと六枚切りの食パンをとり出す。これがあるのはありがたい。そして食パンにバターを塗っておく。
「ハムの厚さはこれぐらいで、これをカットしてと」
包丁で手頃な長さに切っていく。愛用にしているこの包丁が切れ味抜群で助かるんだよな。
ハムとウィンナーも切ったらチーズも挟んでいきホットサンドメーカーの上に配置する。そして上から挟みこみバーナーに火をつけて焼き始めるとすぐに香ばしい香りが漂ってきた。
「ワン! ワゥ~ン!」
「ピキャ~ッ! ピッキュ!」
「マァ~! マッ!」
モコが尻尾をフリフリして興奮し、ラムとマールは飛び跳ねて喜んでいる。三匹とも出来上がりが楽しみなようだな。
「こっちはこれでいいか?」
すると帝からの問いかけ。見ると手際よく準備を進めてくれていた。ウィンナーもいい感じにカットしてくれている。
「手伝ってくれたんだな。ありがとう」
「――別に、手持ち無沙汰だったからやっただけだ」
お礼を伝えると顔を背けて素っ気なく言ってきた。もしかして照れているのか?
そう考えると親近感が湧いた。最初のイメージはなんか怖い感じがしたけど、こうやって接してみると普通の青年だな。
「よし出来上がり」
そう言ってホットサンドメーカーを開けてみせると、モコたちが一目散に近寄ってきた。
俺は焼き上がったホットサンドを食べやすいように半分に切って皿に並べる。そして帝が準備してくれた分も焼きに入った。
「焼き加減見てもらっても大丈夫かな?」
「――仕方ねぇな」
一見すると面倒くさそうにしているけど、素直に応じてくれるから確実に根はいいタイプだな。するとモコ、マール、ラムも真似をして下準備を手伝ってくれた。ラムは体を触手みたいに伸ばして器用に動いてくれている。
出来上がったのはあるのに、手伝いを優先してくれる気持ちが嬉しく思う。本当いい子たちだよなぁ。
「それじゃあスープもつくってしまうか」
俺はキャンプケトルを取り出し水を入れてもう一つのバーナーで温めた。その間にカップにスープの素を入れておく。やることは難しくはないから沸騰までにホットサンドの様子も見ていた。
どんどん出来上がっていくホットサンドに三匹が瞳をキラキラさせていた。こうして朝食の準備が出来たので早速食べることにした。
「熱いから火傷には注意するんだぞ」
「ワン!」
「ピキィ~」
「マァ~♪」
三匹とも理解できたのか熱さを確認しながら食べてくれた。
「帝くんもな」
「いや、ガキじゃねぇんだから……」
帝は不服そうではあったけどやり取りは楽しんでくれてそうだった。そして俺は手にしたホットサンドを口にしたわけだが。
「うん! 美味い。朝のホットサンドはやはり美味いな」
温められてトロッとしたチーズがハムとウィンナーに絡んでいてとても美味しい。そしてスープはコンソメスープだ。ホットサンドとも良くあっている。
「ワン!」
「ピキュ!」
「マァ~♪」
俺の感想に倣うようにモコ、ラム、マールもホットサンドを口にして幸せそうにしていた。美味しいものを食べると人もモンスターも反応は変わらないな。
「どう? 美味いかな?」
「――あぁ。悪くない」
「それなら良かった。差し入れありがとうな」
「――別に……」
返事はそっけないが食事は楽しんでくれてそうだった。しかし本当差し入れには助かったな。秋月にも食べてもらいたいな。まだ材料は残ってるし帰ってきたら振る舞うとしよう――




