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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

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第36話 秋月の家族

「モコちゃん元気だった~?」

「ワン!」


 菊郎から降りた紅葉がモコの頭を撫でる。モコは尻尾をぶんぶん振り、目を細めて喜んだ。


 なんとも微笑ましい光景に、秋月も頬を緩ませている。


「それにしても驚いたなぁ。紅葉と知り合いだったなんて」

「あぁ。前にモコとホームセンターへ行った時に出会ったんだ」


 それを聞いた秋月がハッと目を見開く。


「そういえば紅葉が言ってた! 買い物に行った時に可愛いモンスターを連れた男の人に会ったって。それが風間さんだったんだね」


 秋月が嬉しそうに言った。世間は広いようで狭いな。


「ワウワウ!」

「ピキィ!?」


 話していると、山守家の愛犬・菊郎がラムに近づき、ぺろりと舐めた。驚いたラムはぴょんと跳ねて俺の足元へ逃げ込む。


「ピキュ~……」

「はは、そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。菊郎はいい子だからな」


 ラムが俺の足裏に隠れるようにして、か細い声を上げたので説明した。誤解は解いておかないとな。


「うん! 菊郎もラムちゃんと仲良くしたいと思ってるんだよ」


 秋月もラムの前で屈んで優しく伝えた。やっぱり飼い主としてお互い仲良くやってもらいたいんだろうな。


「ピキィ~?」

「ワウワウ!」


 ラムがそっと体を出すと、菊郎は嬉しそうにお座りして舌を出し、ラムの反応を待つ。やがてラムが意を決したように頭へダイブ。


「ワオン!」

「ピキィ~♪」


 ラムが頭上で跳ね回り、菊郎もご機嫌だ。クッ、全部が可愛い!


「私も乗る~」

「ワン!」


 紅葉が背中に、続いてモコも飛び乗る。菊郎の頭や背ではしゃぐ天使たち──なんという眼福!


「はぁ~本当に可愛い」


 秋月も目を細めて見守っていた。


 ──と、その背後から上品な女性の声。


「あらあら、楽しそうね。お帰りなさい、秋月」


 現れたのは、以前ホームセンターで会った紅葉の母――当然、秋月の母でもある。


「お母さん、紹介するね。ダンジョンを良くしてくれた風間さんだよ」

「あら? そういえば以前お会いしましたね」

「はい、ご無沙汰しております」


 深く頭を下げると、母親は穏やかに微笑んだ。


「娘から聞いていますよ。掃除までしてくださって、本当にありがとう。あの人も会いたがっているの。さあ、中へどうぞ」


 立派な木戸が開き、風通しの良い玄関と磨かれた廊下が現れる。庭には飛び石と手入れの行き届いた松。落葉翁の人柄が偲ばれる和風の屋敷だ。


 玄関で靴を脱ぐと、菊郎が「こっちだよ」と先導し、モコとラムも連なって歩く。紅葉が俺のコートの裾をくいっと引いた。


「ねえお兄ちゃん、ダンジョンに今度遊びに行ってもいい?」

「もちろん。ラムとモコも待ってるよ」


 少女の笑顔が花開き、秋月もほっと安堵の息をつく。


 こうして俺たちは、山守家へ案内されることになった――。

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