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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

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第26話 最悪の再会

「お前、来る場所を間違えてるんじゃないのか? 職業安定所はここじゃないぞ」

「そうよ。ここは冒険者ギルド。ジョブストーンも持っていないダメ男は登録なんて出来ないんだから」


 阿久津と未瑠が嘲るように笑う。人を陥れただけでは飽き足らず、まだ足を引っ張ろうというのか。性格がねじ曲がり過ぎだろう。


「ちょ、風間さん! 一体誰なんですか、この失礼な人たちは!」

「あ、いや──前の職場の“知り合い”さ」


 事情を知る秋月は、それだけで二人の正体を察したようだ。


「つまり──こっちの女性が浮気して風間さんを捨てた悪女で、隣が“親友”と称してその女性を奪った最低男ってことですね」


 秋月が容赦なく言い放つ。遠慮という概念がないらしい。


「なんだと? ……にしても可愛いじゃん。君、学生? こんな奴に騙されるなよ」

「誰が学生ですか! 私はもう成人してますし、れっきとした社会人です!」

「は? 嘘でしょ? 高校生にしか見えないっての。阿久津、あんた何でそんな子ども相手に鼻の下伸ばすのよ!」


 未瑠が阿久津の腕を揺さぶる。俺の悲惨な経験がフラッシュバックして思わずため息が出た。


「高校生呼ばわりなんて、本当に失礼な人たちですね!」

「ワウワウ!」

「ピキィ!」


 ヒートアップする秋月を横目に、モコとラムも怒りを露わにする。


「てか何なの、その奇妙な生き物は?」

「お前たちに関係ない」


 未瑠の品定めするような視線が胸くそ悪い。


「……まさかテイマー系のジョブストーンでも拾ったのか? なんでお前みたいな無職のゴミがそんなモン持ってんだよ!」


 阿久津が唇を歪める。どこまで噛みつけば気が済むんだ。


「そこ! さっきからうるさいですよ。静かにしなさい!」


 受付カウンターから鋭い叱責。俺たち全員が一斉に肩を震わせる。


「騒がしくして申し訳ありませんでした」

「私もつい熱くなって……ごめんなさい」

「ワン……」

「ピキュウ……」


 先に頭を下げたのは俺と秋月。最初に絡んできたのは向こうだが、ここで揉め事を大きくする気はない。だが当の二人は謝るどころか、ふてぶてしく腕を組んでいる。


「お前らのせいで職員に睨まれたらどうするんだよ」

「ほんとよ。せっかく買ったジョブストーンで登録出来なくなったら困るんだから」


 文句を言うなら最初から絡むな。こっちは関わる気など無かったのに。


「聞いていた以上に酷い人たちですね。風間さん、何で付き合ってたんですか?」

「……知り合った頃は、もう少しまともだったんだ」


 俺が嘆息しながら履歴書の残りを埋めようとしてると、阿久津がまた口を挟む。


「ちゃんと“会社をクビになった”って書いとけよ? 経歴詐称で捕まるぞ」


 本当に性格が悪い。


「放っておいて貰えますか? そっちはそっちで記入してください」


 秋月がうんざりした声で返す。俺もいい加減イラついてきた。


「彼女の言うとおりだ。お前らは自分のことだけ考えろ。こっちを気にするな」

「は? 誰がお前みたいな奴を気にすると? 俺はこの子が騙されそうだから忠告してやってるだけだ」

「そうよ。大体まともなジョブストーンも持ってないんじゃないの? 連れてるのも雑魚モンスターじゃない」

「ワン! ワン!」

「ピキィ! ピキッ!」


 モコとラムが吠える。俺も怒りがこみ上げる。


「モコもラムも大事な仲間だ。雑魚呼ばわりは許さん」

「雑魚が友達って、ウケるな」

「……また職員に怒られたいんですか?」


 秋月がカウンターを指差す。職員が再び鋭い視線を送っている。


「チッ、面倒くせぇ――」


 阿久津は舌打ちしながらポケットからタバコを出し、ライターを構えた。


「おい阿久津! ここは禁煙だ」

「ワンワン!」

「ピキィ!」


 壁の「全館禁煙」プレートを見て、阿久津が舌打ち混じりにタバコをしまう。


「とにかく、お前は登録しても俺たちに話しかけてくるなよ。……君は困ったら俺に相談していいからね」

「ちょっと!」


 未瑠が阿久津の腕を引っ張り、二人で別の記載台へ。俺は深呼吸し、履歴書の続きを書く。


 ――何より今は登録と鑑定審査。それが終わったら、余計な連中に振り回される時間など無くなるはずだ。

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