表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/177

第25話 冒険者ギルドにやってきた

「ここがギルド支部か……思ったより“役所”だな」


 ナビに従って車を進めると、灰色の箱型ビルの正面に大きな看板。

 冒険者ギルド ○○地域支部――鉄筋コンクリート造の、いかにも現代日本の公共施設だ。


「駐車枠も広いですし助かりますね」


 秋月がオフロード車をゆっくり枠へ収める。埋まり具合は六割程度。


 モコを抱え、ラムを肩に乗せてエントランスへ。手動のガラス扉を押すと、白いロビーと一本のカウンター。


 三十代前半ほどの事務員がきびきびと立っていた。


「あの、ジョブストーンを入手したので新規登録をお願いしたいのですが」


 名乗りを終えると、女性の視線は一瞬だけモコとラムに向けられるが動じない。場慣れしているらしい。


「登録ですね。お手続きにはいくつか書類が必要となります。まず確認ですが――そちらのモンスターは既にテイム済み、ということでよろしいでしょうか?」


 不意を突かれた。受付の女性が怪訝そうにこちらを見ていた。登録前のテイムは疑念を招く。


「し、仕方なかったんです!」


 秋月が慌てて割って入る。


「栽培した作物に特殊効果が付いてしまい、それを食べて懐いたんです。不可抗力で!」


 受付嬢はメガネを押し上げ、僅かに溜息をつく。


「食餌従属のケースですね。後ほど鑑定審査がございますので、そちらで安全性を確認いたします。では新規登録のご説明に移ります」


 テキパキとした受付嬢が胸元のネームプレートを軽く指で押さえ、続きを促す。抑揚こそ淡々としているが、言葉選びは丁寧だ。


「よろしくお願いします」


 俺がうなずくと、彼女は卓上端末を操作し、小さなメモパッドをこちらに向けた。


「ご用意いただくものは四点です。個人番号カード、印鑑、住民票の写し、そして履歴書」


 指先で一つ一つを示しながら視線を合わせてくる。柔らかな香水の匂いがわずかに漂った。


「個人番号カードと印鑑はお持ちですか?」


 胸ポケットからカードケースを取り出しつつ、俺は首の後ろをかく。


「印鑑は三文判ですが……」


 ポケットの奥で朱肉の蓋をいじる自分の指先が、少し汗ばんでいるのを感じた。


「かまいません」


 受付嬢は小さく笑ってメガネを押し上げると、ロビーの隅に設置された端末を手のひらで示した。


「住民票の写しはあちらの端末で即時発行できます。一通二百円です」


 案内を受けて秋月が「なるほど」と頷き、モコとラムも首を傾げて端末を見上げる。


「履歴書は新規受付横の記載台に専用用紙とサンプルがございます。証明写真ブースもそちらにございますので、撮影後に貼付してください」


 メモパッドを戻すと、受付嬢は腰を軽く折り畳んで一礼した。


「何かご不明点がありましたら、いつでもお声がけください」

「分かりました。ありがとうございます!」

俺も深く頭を下げた。すると足元のモコが「ワフッ」と短く鳴き、ラムが肩の上でぷるんと震えて同調する。


 一連のやり取りを終え、俺たちは必要書類を揃えるためロビーの端末へ向かった。


 端末に個人番号カードを通し、住民票を一通出力。証明写真ブースで撮影し、そして奥の新規登録受付所に向かう。


 白い壁が続く細長い通路を進むとT字路につきあたりその正面に目的の部屋があった。


 中に入ると長椅子が幾つか置かれていて待っている人も結構いた。

 番号札を取り、待合の長椅子へ。呼出モニターには二桁後。待ち時間を使い、壁際の記載台で履歴書を埋める。


――その時。


「おいおい。何で“会社クビ”の役立たずがこんな所にいるんだよ」


 聞き慣れた声に背筋が凍る。振り向けば、軽薄な笑みを浮かべた阿久津。

 その腕に絡むのは、俺を裏切った元婚約者・未瑠。


「あら、本当。あなたが冒険者? 身の程知らずね」


 モコは耳を伏せて唸り、ラムはぷるるっと淡い光を弾かせる。

 ギルド登録という第一関門を前に、最悪の“因縁”が立ちはだかった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ